『ブレイクアウト投資法』とは、「株価が、停滞を突き抜けて急上昇した時に売る」という手法。特に市場がバブル状態の時に効果的です。
「急上昇した時に売る」というと当たり前のようですが、ポイントは「停滞を突き抜けて」ということ。停滞していたということはつまり「いつ落ちてもおかしくなかった」ということです。
そういう「一番怖い状態」を突き抜ける(ブレイクアウトする)まで待つ。そうした「精神力」が問われる手法です。
目次
- 1.ブレイクアウト投資法の概要
- └ 1-1.まず、どのくらい儲かるのか?(実例)
- └ 1-2.ブレイクアウト投資法に必要なもの
- 2.ブレイクするパターンとは?
- └ 2-1.値が動きやすい(軽い)
- └ 2-2.板が厚すぎず、薄すぎない
- └ 2-3.日足チャートが右肩上がりである
- 3.ブレイクアウト投資法は、損切りが必須
- └ 3-1.決めたルールは、淡々と実行する
- 4.ブレイクアウト投資法で、資金力が有利に働く理由
- └ 4-1.ウォーレン・バフェットが倹約家だった理由
- └ 4-2.タートルズ生みの親「リチャード・デニス」
1.ブレイクアウト投資法の概要
1-1.まず、どのくらい儲かるのか?(実例)
最近で一番有名な実例は「ガンホー」です(ガンホーオンラインエンターテイメント)。
- 2012年末~2013年
- 1株約80万円→約1600万円
- 約20倍の上昇
という、驚異的な上げ相場を見せました。ブレイクの「幅」が大きかっただけでなく「回数」も多かったので、ブレイクアウト投資法を知っている人だったら「途中参戦もできた」ということです。
(値上がりした株を買えるだけの、一定の資金力も必要でしたが)
ガンホー以外でも、特に2013年はアベノミクス相場で、多くの銘柄がブレイクアウトしました。ユーグレナ・コロプラなども、ガンホーのように値上がりを続け、毎日数百万円の利益を出していた個人投資家も、多数います。
…というように非常に儲かる「ブレイクアウト投資法」。始めるには、何を身につけたらいいのか。
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1-2.ブレイクアウト投資法に必要なもの
ブレイクアウト投資法に必要な要素は、
- 板読み…ブレイクするパターンを見慣れる
- マインド…7割は負ける(損切る)ことを知っておく
という2つです。板読みの技術は重要ですが、ベテランでも「7割負ける」手法なので「平気で損切りできる精神力」も必要になります。
「7割も負けるのか」と思われるでしょうが、これは「回数」の問題。「3勝7敗」でも「その3勝で大きく稼ぐ」から、トータルではかなりの利益になるのです。
(この「少ない勝数で大きく稼ぐ」というのは、投資の基本です。ソフトバンクなども、そういうベンチャー投資で稼いでいる企業です)
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2.ブレイクするパターンとは?
絶対のパターンはありませんが、下のような銘柄は、ブレイクアウト投資法に適しています。
- 2-1.値が動きやすい(軽い)
- 2-2.板が厚すぎず、薄すぎない
- 2-3.日足チャートが右肩上がりである
以下、それぞれ解説します。
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2-1.値が動きやすい
「値動きが小さく安定している株」は、ブレイクアウト投資には不向きです。たとえば「みずほ」などですね。
ブレイクアウト投資では、ガンホーのように「激しく動く銘柄」を選ぶ必要があります。「激しく下がる」可能性も当然あるし、だからこそ「7割負ける」のですが、あえてそういう銘柄を選ぶ、ということです。
(これが第一条件です)
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2-2.板が厚すぎず、薄すぎない
「板」というのは、
- 売り注文
- 買い注文
が並んでいるページ(表)のこと。板が「厚い・薄い」というのは、
- 厚い…注文が大量にある(売買とも)
- 薄い…注文が少ない(売買とも)
ということです。「厚すぎる・薄すぎる」がブレイクアウトに向かない理由は、
- 厚すぎる…大口投資家が多数いて、彼らによる「騙し」がありうる
- 薄すぎる…特に「売り」の選択肢が少ないので、損切りしづらい
ということです。
大口投資家の「騙し」とは?
簡単に書くと、
- わざと大量の買いを入れる
- 「ブレイクした」と見せかける
- 個人投資家が群がってきた所で、一斉に売る
という方法です。たとえば「タートルスープ」という手法が有名です。
これは、アメリカの「タートルズ」という投資家集団が、ブレイクアウト投資で稼いでいたため。彼らを「騙す」ためにローレンス・コナーズなどの投資家が生み出した手法です。
「板が厚い」場合、大量の売買をできる「広いスペース」があるので、彼らのような大口投資家・ヘッジファンドが「暴れやすい」のです。そのため、初心者には危険なんですね。
「売りの選択肢が少ない」とは?
たとえば、今あなたが「手持ちの株を売ろう」としています。で、「買いたい」と言っている人たちの情報を見る。彼らの「言い値」を見るわけです。そうしたら、
- 100円
- 99円
- 98円
- 97円
…と、すべての言い値が並んでいる。それも、「すべてある程度の人数」がいる。
という状況では「売りやすい」わけです。「100円でダメなら99円、それもダメなら98円…」という風に、「よりマシな値段」で売ることができるからですね。
これが「薄すぎる板」だと、下のようになります。
- 100円
- 94円
- 86円
- 81円
これでは「話にならない」というのがわかるでしょう。もし100円の買い注文が埋まってしまったら、次は「94円」まで「激落ち」するのです。
これは極端な例ですが、「薄すぎる板」はこのように「売りにくい」んですね。いざ損切り…という場面で「逃げ場がない」のです。
…という2つの理由から「板が厚すぎず、薄すぎない」銘柄を狙うわけです。
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2-3.日足チャートが「右肩上がり」である
これは絶対条件ではありません。ただ、ブレイクアウトする銘柄は大体、日足チャートも右肩上がりです。
日足チャートとは「毎日の株価の変化を並べた」もの。
- 16日…1200円
- 17日…1230円
- 18日…1320円
…というイメージです。(実際は「始値」「終値」など、もっと多くの情報が入りますが)
で、上の例は16日~18日にかけて「常に上がって」います。このように、一定の期間「右肩上がり」で日足チャートが動いている…、という銘柄が、ブレイクアウト投資には適している(ことが多い)です。
右肩上がりだと「期待」でブレイクしやすい
ここまで上がってきた株は「今後も上がる」と、投資家たちが期待します。ガンホーの株価が20倍になったのも、別にガンホーの実力が20倍になったわけでなく「値上がりの期待」が20倍になったわけですからね(当然ですが)。
その「期待」を誘発するのは、やはり「これまでの流れ」。ということでブレイクアウト投資法では「日足チャートは右肩上がりの方がいい」わけです。
「右肩上がりでなくてもいい」ケースはありますが、これは上級者向けですし、数も少ないので、特に意識する必要はありません。ブレイクアウト投資法に慣れるまでは、「日足チャートが右肩上がり」の銘柄だけに絞りましょう。
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3.ブレイクアウト投資法は、損切りが必須
何度か書きましたが、ブレイクアウト投資法は「上級者でも、7割は負ける」という、失敗率の高い手法です。ただ、あくまで「率」であり、少ない勝数でも「そこで莫大な利益」を得ればいい…、ということです。
これだけ負ける手法ですから、それぞれの負けで「うまく損切る」ことが非常に重要。この損切りに必要なのは、
- 「ここまで下がったら絶対売る」という基準
- そのルールを「絶対に曲げない」という自己コントロール
- 多少損失が出ても平気な、資金力
という3つです。基準については、多くの投資家が提言しているルールを比較して「自分は、このラインまでは負けを許せる」というものを選びましょう。
(この基準は、その人が得たい利益や、今の資金力によって変わります)
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3-1.決めたルールは、淡々と実行する
次に、そうして決めた損切りのルールは「淡々と」実行しなくてはいけません。「強い覚悟で守る」というよりは、「月曜日だから、学校行くか」くらいのノリで、「嫌だけど、淡々とやる」方が成功します。
プロ野球選手は、高校球児のように勝ったり負けたりした時に、いちいち泣きません。長く結果を残すには、毎回の結果に一喜一憂して「脳に負担をかける」ことを避けた方がいいからです。
(脳も臓器なので、肝臓などと同じく休憩が必要です)
ということで、ブレイクアウト投資法では多数の損切りをしますが、毎回「ルール通り淡々と」やりましょう。頭を使うのは、
- ルールの設定
- 投資全般の勉強
- 投資資金を獲得するための事業・仕事など
という場面です。「どうしよう、損切りしようか…」などという枝葉の場面で、頭や時間を使ってはいけないのです。
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4.ブレイクアウト投資法で、資金力が有利に働く理由
資金力があった方が有利、というのは当然過ぎる投資の鉄則です。しかし、多くの場合は「元手が大きいから、増える割合も多い」という意味でしょう。
ブレイクアウト投資の場合、それもありますが「別の理由」があります。「資金が多いほど、仕掛けられる回数も多くなる」ということです。
多く仕掛けると、下のようなメリットがあります。
- 勝率3割なので、単純に勝数が多くなる
- 経験が蓄積されて、勝率がさらに上がっていく
ということ。ブレイクアウト投資は、実際に投資をしているうちに、何となく「これはブレイクするな」というのがわかってきます。それで外れても当たっても、回数が増えるほど「精度が高まっていく」わけです。
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4-1.ウォーレン・バフェットが倹約家だった理由
ブレイクアウト投資のような「ホームラン狙い」の手法でも、やはり資金があればあるほど有利―。これを見ても、投資は「一にも二にも元手」というのがわかるでしょう。
ウォーレン・バフェットが倹約家だったのは有名ですが、彼は散髪に行く時すら「散髪代を複利で運用したら、いくらになるか」といちいち計算して、節約していたそうです。
こうやって倹約して元手を増やすことは「増え方を大きくするため」だけでなく「場数を踏む」ためにも必要なのです。あらゆる場面で「とにかく元手」なんですね。
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4-2.タートルズ生みの親「リチャード・デニス」
もちろん、小さな元手から「投資によって成り上がる」という人もいます。ブレイクアウト投資を広めた集団・タートルズを育て上げた「リチャード・デニス」もそうです。
彼は約5万円(400ドル)の元手から始め、数千億円(数十億ドル)まで資産を増やしました。しかし、その彼でも一時期「50%資産を減らし、トレードをやめる」という挫折を味わっています。
ただ、こういう失敗をしながらでも場数を踏むためには、どうしても元手が必要であり、「支出が少ない」ことが重要です。投資で稼ぐには、ある程度の倹約も、同時に覚える必要があるのです。
(ただ、時間を節約するためなら、どれだけでもお金を使うべきだと、ウォーレン・バフェットも言っています)
以上、マインド的・根本的な部分も含めて、ブレイクアウト投資法についてまとめました。結局これも「楽して稼げる裏ワザ」のようなものではないので、本質的な努力は忘れないようにしてください。
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