パニック株投資法とは「不祥事で一時的に急落した株を買う」という手法。不祥事でも事件でもいいですが、とにかく「一時的な急落」が狙い目です。
「企業自体に問題がある」という事件でなければ、多くの場合は「不幸な事故」のようなもの。それでも、株は一度売られ始めると「自分が損するのが嫌だ」ということで、みんな一気に売り始めるんですね。
そのため「不当に価格が下がる」ことが多いのです。これは逆に「異様に安い価格で買える」ということなので、その企業の回復に自信があれば「大チャンス」なんですね。
根本的な問題なのか、一時的なトラブルなのか
パニック株投資で一番重要なのは、その事件・不祥事の本質です。
- 企業の根本に関わる問題
- ただの一時的なトラブル
この2つのどちらか、ということですね。前者だったら買ってはいけません。後者だったらチャンスです。それぞれ、実例を示しましょう。
三菱自動車リコール隠蔽問題(2000年、2004年)
リコールというのは「欠陥商品を回収して、無料で修理する」というもの。三菱自動車は長らくこれをせず、欠陥のある車両をそのまま販売していました。それが二度にわたって発覚し、同社の信頼が地に落ちた事件です。
当然株でも「パニック売り」が起きましたが、これは当然「買ってはいけない」事例。「企業の体質そのもの」が腐敗していたからです。
日揮・アルジェリア人質事件(2013年)
2013年に起きた「アルジェリア人質事件」です。天然ガスを精製する施設で、41人の民間人がテロの人質になりました。
その中に日本人の方が10人いたのですが、全員が日揮の関係者の方でした。そして、不幸なことに全ての方が殺害されてしまいました。これによって、日揮の株価が急激に落ちてしまったのです。
結果的にこれは「ただのパニック」で、日揮の株価はすぐに回復しました。このような時は「買うべき」なのですが、この時点でそれを見極めるには、どうすればよかったか。それを解説します。
(もちろん、人が亡くなっている以上「株価の話をするのは不謹慎」というのは確かでしょう。ただ、こういう時「下がってしまった日揮の株を、誰かが買い支える」ということも、同社を支えるために重要なのです。そういう企業の支え方として、参考にしてください)
大企業なら問題なし。中小企業なら警戒が必要
「その企業が悪くないトラブル」でも、中小企業の場合は注意が必要。というのは「株価・評判が回復するまでに、倒れてしまう」ことがしばしばあるからです。
しかし、日揮のような大企業なら話は別。このくらいのトラブルではびくともしないからです(もちろん、社員さんの精神的なダメージは大きかったでしょうが、経済的には日揮は揺るがなかったのです)。
実際、その後日揮の株価は3ヶ月で回復しました。中小企業、特にベンチャーだったら、この期間に資金繰りがつかなくなって倒れる…ということもあったかも知れません。
「不幸な事故」でも、リスク管理に問題がなかったか
「不幸な事故」だったら、すべて「企業は悪くない」と決めつける―。これは危険です。というのは「その事故は、防げたかも知れない」からです。
この日揮の場合「現地でのリスク管理に、問題はなかったか」ということですね。
- 現地人に嫌われるようなことをしていなかったか
- 「セキュリティが杜撰」などの問題がなかったか
ということですね。そして、日揮の場合はこのどちらも問題ありませんでした。特に現地人との関係については、日揮は1969年から多くのプロジェクトを成功させ、現地人スタッフの教育にも力を入れており、かなり信頼されていました。
このように、日揮の場合は何も問題ありませんでした。しかし、中には現地で嫌われているような企業もあるかも知れません。こうした「事故・事件の原因」の見極めも重要です。
パニック株投資法での、買い方・買い時
「明らかに買うべき」をいう銘柄が見つかった―。では、いつ・どうやってその株を買えばいいでしょうか。
大抵のパニック株は、落ちる所まで落ちると、しばらく落ち着きます。「いきなり反動」する株は、あまりありません。
ということで「落ちてしばらく落ち着いた」ところで一気に買うといいでしょう。それまでは待つことをおすすめします。
落ち着いた状態から、また下がったら…
この場合「その企業は絶対に悪くない」という自信があれば、さらに買い増ししていくといいでしょう。下がる度に追加で買っていく「ナンピン買い」という手法です。
もし確実に回復するなら「下がれば下がるほどいい」わけです。だから「また下がる」は究極のチャンスなんですね。ただ、これはあくまで「自信がある人」のやり方です。
パニック株の売り方・売るタイミング
上のように仕込んだ株を、次はどのように売るか―。これは大体「買った値段の3分の1~半分程度」まで回復したら、売ってしまいましょう。
「もっと待てばさらに上がる」ということももちろんあるでしょうが、基本的に「ボーナス」のようなものなので、早く利益確定する方がおすすめです。
どこまでリバウンドしたら売るか、事前に決めておく
上では「3分の1~半分」と書きましたが、この基準は当然人それぞれです。「ここまで回復したら売る」という売りラインを、自分の中で決めておくといいでしょう。
そして、そのラインまで回復したら「何も考えず、機械的に売る」こと。投資はこのように「自分の決めたルールには絶対服従する」というのが基本です。
それで失敗しても成功しても「決断力」がつくし、冷静な時に考えたルールの方が、相場の上昇や下落を目にしている興奮時よりも、正しい判断であることが多いからです。
パニック株投資法のまとめ・ポイント
以上、パニック株投資法のポイントをまとめると、下のようになります。
- 「事件・不祥事などで急落した株を買う」やり方
- 「企業に根本的な問題がない」株を買う
- 買い時…下落が落ち着いた頃
- 売り時…買値の3分の1~半分程度まで回復したら
日揮の部分でも書きましたが、こういう時に「株を買う」というのは、決して「不謹慎」ではありません。こういう状態で「株価まで下がる」というのは、企業にとって「ダブルパンチ」だからです。
せめて株価だけでも、これ以上落ちないようにする―。そのためにも「パニック株投資法」は重要なんですね。決して「マネーゲーム」ではないのです。