割安株投資法(バリュー投資法)は、「フレンチ型」と「グレアム型」の2通りがあります。
- フレンチ型…「指標」を見て、銘柄を決める
- グレアム型…「企業そのもの」を見て、銘柄を決める
というのが両者の違い。グレアム型は「ひたすら企業や経済を研究する」のみです。ここでは初心者でも取り組みやすい「フレンチ型」について、「どんな指標を使うか」を解説します。
割安株投資法(グロース投資法)で使う株式指標
割安株投資法では、特に下のような株式指標を使います。
- PER(株価収益率)
- PCFR(株価キャッシュフロー倍率)
- PBR(株価純資産倍率)
以下、それぞれの指標の意味や見方を、解説します。
PER(株価収益率)とは
PERは「その株を今買うと、何年で回収できるか」という数字。つまり「小さいほうがいい」わけです。たとえば、
- A社のPER…1
- B社のPER…3
という場合「A社の方がいい」わけですね。「たった1年で、全額回収できる」わけですから。
たとえば「100万円」投資したら、1年後には「プラス100万円」になっている計算です。もちろん、ここまで美味しい株はめったにありません。
大抵の株は「PER…15」前後です。つまり「回収に15年かかる」ということですね。単純に利率でいうと「毎年6%ずつ回収する」という感覚です(実際はもっと複雑ですが)。
PCFR(株価キャッシュフロー倍率)とは
PCFRも、上のPERとほぼ同じ。「何年で回収できるか」という数値なので「小さい方がいい」です。
では、PERと何が違うのか。PCFRは何のためにあるのか。これは「両方見ることで、さらに正確な判断ができる」ということです。
PCFRも見ると、なぜ正確に判断できるのか。この説明のために「PERの仕組み」から先に解説します。
PERで「何年で回収できる」かがわかる理由
会社には「値段」があります。「時価総額」というやつです。
たとえばソフトバンクの時価総額は、2015年8月末時点で「8兆5000億円」。この金額を出せば「ソフトバンクを買える」ということです。
この金額を出すということは「ソフトバンクの株を100%取得する」ということ。仮にあなたが取得したとしましょう。
で、この「8兆5000億円」を、どうやって取り戻すか。それは「毎年の利益」でしょう。毎年の利益が「1兆円」だったら、「毎年1兆円ずつ回収する」ということです。
この場合「8.5年」で全額回収できます。というように「時価総額÷利益」をやれば、「何年で回収できるか」がわかるんですね。
「一人で全部買う」のでなくても同じです。普通の株取引の場合も「他の株主たちと一緒に、全員でソフトバンクを買う」わけですから。
こういう仕組みで「PER=何年で回収できるか」という目安になるわけです。
PERとPCFRの違いは?
両者の違いは「利益」の意味です。
- PER…「帳簿上の」利益
- PCFR…「実際に手元にある」現金
ということです(簡単にいうと)。
「帳簿上の利益」と「手元にある現金」の違い
「帳簿上の利益」(会計上の利益)は「実際に、お客さんからもらっていないお金」が大量にあります。企業間のやり取りは、「その場ですぐに現金払い」ではないからです。
たとえば「100万円の取引」が成立したら、会計上は「100万円の売上」が出ます。しかし、その100万円は「今もらえる」わけではありません。
仮に半年後だとすると、半年間は「手元の現金は増えていない」わけですね。こういう「未回収の売上」は恐ろしいもので、企業はしばしば「利益が出ているのに倒産」します(黒字倒産)。
こういう現実を見ると「家計上の利益」はあてにならない―。ということで、生まれたのが「キャッシュフロー」という考え方です。「実際に、手元にいくらのお金があるか」で、利益を測定するわけですね。
割安株投資でも「PCFRだけ」見ればいいのでは?
上のように書くと「PCFRの方が正しいんだから、PCFRだけ見ればいいじゃん」と思うかも知れません。実際「PERより、PCFRを重視する」という投資家は多いです。
しかし、一応「両方見る」方がいいんですね。というのは、両者の数字が「近い時」と「かけ離れている時」というのは、ある程度法則があるからです。
たとえば「粉飾決算を見抜く」時なども、これらの違いが役立つのです。この2つ以外にもいろいろ見ますが、要は「データは多ければ多いほどいい」ということですね。
(多すぎて混乱しない程度に、ですが)
PBR(株価純資産倍率)とは
PBRは「今、その会社が倒産したら、どのくらいの金額をもらえるか」という数値。正確に言うと、「買った時の値段:倒産時にもらえる金額」の比率がどれだけか、ということです。たとえば、
- A社の株を「100円」で買った
- A社がすぐ倒産して「100円」戻ってきた
この場合「100:100」なので、「PBR=1」になります。これが基本の状態です。
PBRが「1より下」だと、割安と言われるが…
このPBRが「1より下」ということは「倒産したら、買った時よりも多い金額が戻ってきた」となります。つまり、「その株には、リスクが一切ない」ということ。
倒産というのは株主にとって「最悪の事態」です。そんな時でも「利益が出る」わけですから、基本的に「必ず利益が出る株=いい株」とも言えます。
ただ、実際にはそこまで単純ではありません。「PBR=1」より高くても低くても、重要なのは「その理由」です。
「いい理由」によってそうなることもあれば、「悪い理由」によってなることもあるわけです。単純に「数字だけ見て」決めることはできないんですね。
という風に、最終的には「企業そのものを見る」ことが必要です。ただ、そういう「全体の問題」がなければ、基本的には「PBRは、1より小さい方がいい」と思ってください。
(投資用語で「PBR1倍割れ銘柄」といいます)
まとめ ~割安株投資法の指標の見方~
以上、割安株投資法で特に重要な3つの指標を解説しました。ポイントをまとめると下の通りです。
- PER…「何年で回収できるか」の数値。低いほどいい
- PCFR……PERの「キャッシュフロー」版。PERと合わせて使う
- PBR…解散価値。「1倍以下」がいい
見方は大体この通りですが、ここまで書いた通り、どの数値も単純に機械的に判断できるものではありません。「数字上、たまたま良くなる」こともありますし、粉飾も可能です。
初心者がすぐ取り組めるという点では、これらの数値を使う「フレンチ型」の方がいいでしょう。ただ、フレンチ型の割安株投資をしつつも「グレアム型」(企業研究)を取り入れることは、忘れないようにしてください。