投資の判断基準割安株投資法で使う3つの株式指標「PER・PCFR・PBR」の意味&見方

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割安株投資法(バリュー投資法)は、「フレンチ型」と「グレアム型」の2通りがあります。

  • フレンチ型…「指標」を見て、銘柄を決める
  • グレアム型…「企業そのもの」を見て、銘柄を決める

というのが両者の違い。グレアム型は「ひたすら企業や経済を研究する」のみです。ここでは初心者でも取り組みやすい「フレンチ型」について、「どんな指標を使うか」を解説します。

割安株投資法(グロース投資法)で使う株式指標

割安株投資法では、特に下のような株式指標を使います。

  1. PER(株価収益率)
  2. PCFR(株価キャッシュフロー倍率)
  3. PBR(株価純資産倍率)

以下、それぞれの指標の意味や見方を、解説します。

PER(株価収益率)とは

PERは「その株を今買うと、何年で回収できるか」という数字。つまり「小さいほうがいい」わけです。たとえば、

  • A社のPER…1
  • B社のPER…3

という場合「A社の方がいい」わけですね。「たった1年で、全額回収できる」わけですから。

たとえば「100万円」投資したら、1年後には「プラス100万円」になっている計算です。もちろん、ここまで美味しい株はめったにありません。

大抵の株は「PER…15」前後です。つまり「回収に15年かかる」ということですね。単純に利率でいうと「毎年6%ずつ回収する」という感覚です(実際はもっと複雑ですが)。

PCFR(株価キャッシュフロー倍率)とは

PCFRも、上のPERとほぼ同じ。「何年で回収できるか」という数値なので「小さい方がいい」です。

では、PERと何が違うのか。PCFRは何のためにあるのか。これは「両方見ることで、さらに正確な判断ができる」ということです。

PCFRも見ると、なぜ正確に判断できるのか。この説明のために「PERの仕組み」から先に解説します。

PERで「何年で回収できる」かがわかる理由

会社には「値段」があります。「時価総額」というやつです。

たとえばソフトバンクの時価総額は、2015年8月末時点で「8兆5000億円」。この金額を出せば「ソフトバンクを買える」ということです。

この金額を出すということは「ソフトバンクの株を100%取得する」ということ。仮にあなたが取得したとしましょう。

で、この「8兆5000億円」を、どうやって取り戻すか。それは「毎年の利益」でしょう。毎年の利益が「1兆円」だったら、「毎年1兆円ずつ回収する」ということです。

この場合「8.5年」で全額回収できます。というように「時価総額÷利益」をやれば、「何年で回収できるか」がわかるんですね。

「一人で全部買う」のでなくても同じです。普通の株取引の場合も「他の株主たちと一緒に、全員でソフトバンクを買う」わけですから。

こういう仕組みで「PER=何年で回収できるか」という目安になるわけです。

PERとPCFRの違いは?

両者の違いは「利益」の意味です。

  • PER…「帳簿上の」利益
  • PCFR…「実際に手元にある」現金

ということです(簡単にいうと)。

「帳簿上の利益」と「手元にある現金」の違い

「帳簿上の利益」(会計上の利益)は「実際に、お客さんからもらっていないお金」が大量にあります。企業間のやり取りは、「その場ですぐに現金払い」ではないからです。

たとえば「100万円の取引」が成立したら、会計上は「100万円の売上」が出ます。しかし、その100万円は「今もらえる」わけではありません。

仮に半年後だとすると、半年間は「手元の現金は増えていない」わけですね。こういう「未回収の売上」は恐ろしいもので、企業はしばしば「利益が出ているのに倒産」します(黒字倒産)。

こういう現実を見ると「家計上の利益」はあてにならない―。ということで、生まれたのが「キャッシュフロー」という考え方です。「実際に、手元にいくらのお金があるか」で、利益を測定するわけですね。

割安株投資でも「PCFRだけ」見ればいいのでは?

上のように書くと「PCFRの方が正しいんだから、PCFRだけ見ればいいじゃん」と思うかも知れません。実際「PERより、PCFRを重視する」という投資家は多いです。

しかし、一応「両方見る」方がいいんですね。というのは、両者の数字が「近い時」と「かけ離れている時」というのは、ある程度法則があるからです。

たとえば「粉飾決算を見抜く」時なども、これらの違いが役立つのです。この2つ以外にもいろいろ見ますが、要は「データは多ければ多いほどいい」ということですね。

(多すぎて混乱しない程度に、ですが)

PBR(株価純資産倍率)とは

PBRは「今、その会社が倒産したら、どのくらいの金額をもらえるか」という数値。正確に言うと、「買った時の値段:倒産時にもらえる金額」の比率がどれだけか、ということです。たとえば、

  1. A社の株を「100円」で買った
  2. A社がすぐ倒産して「100円」戻ってきた

この場合「100:100」なので、「PBR=1」になります。これが基本の状態です。

PBRが「1より下」だと、割安と言われるが…

このPBRが「1より下」ということは「倒産したら、買った時よりも多い金額が戻ってきた」となります。つまり、「その株には、リスクが一切ない」ということ。

倒産というのは株主にとって「最悪の事態」です。そんな時でも「利益が出る」わけですから、基本的に「必ず利益が出る株=いい株」とも言えます。

ただ、実際にはそこまで単純ではありません。「PBR=1」より高くても低くても、重要なのは「その理由」です。

「いい理由」によってそうなることもあれば、「悪い理由」によってなることもあるわけです。単純に「数字だけ見て」決めることはできないんですね。

という風に、最終的には「企業そのものを見る」ことが必要です。ただ、そういう「全体の問題」がなければ、基本的には「PBRは、1より小さい方がいい」と思ってください。

(投資用語で「PBR1倍割れ銘柄」といいます)

まとめ ~割安株投資法の指標の見方~

以上、割安株投資法で特に重要な3つの指標を解説しました。ポイントをまとめると下の通りです。

  • PER…「何年で回収できるか」の数値。低いほどいい
  • PCFR……PERの「キャッシュフロー」版。PERと合わせて使う
  • PBR…解散価値。「1倍以下」がいい

見方は大体この通りですが、ここまで書いた通り、どの数値も単純に機械的に判断できるものではありません。「数字上、たまたま良くなる」こともありますし、粉飾も可能です。

初心者がすぐ取り組めるという点では、これらの数値を使う「フレンチ型」の方がいいでしょう。ただ、フレンチ型の割安株投資をしつつも「グレアム型」(企業研究)を取り入れることは、忘れないようにしてください。

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