PER(株価収益率)とは何か―。最初にポイントをまとめます。
- 意味は?…今その株を買ったら、何年で費用を回収できるか
- どういう数字がいい?…少ないほど良い(ことが多い)
- いくつ以下がいい?…大体「15」以下。業界による
- どうやって調べる?…ヤフーファイナンスなど。どこでも見れる
以下、詳しく解説します。
なぜ「何年で費用を回収できるか」が必要なの?
デイトレードだったら、必要ありません。この疑問を持つ人は、「デイトレードと株式投資を、ごちゃ混ぜにしている」のです(もちろん、別に悪いことではありません。
デイトレードは「投機」で、株式投資は一種の「経営」です。「会社の一部を買い取り、そのオーナーになる」ということです。
経営だから、中長期で費用を回収していく
会社の一部を買い取るということは、たとえば「ソニーのテレビ部門を買い取る」ようなもの。そして、買い取った後、すぐ売る人がいるでしょうか。いないですよね。
「すぐ売っても利益が出る」くらい人気沸騰なら、売るかも知れません。しかし、その場合は「買う時も超高値」なので、あまり利益は出ません。
ということで「会社の一部を買い取る」という、本来の株式投資では「一定期間は、株を持つ」ことが必要なのです。絶対ではないですが、その方が大きな利益が出ます。
そのため、「何年で費用を回収できる」という数値が必要なのです。それがPERです。
なぜ、PERでそれがわかるのか?
まず、あなたが「ソニーのテレビ部門」を買い取るとします。その費用が「1000億円」としましょう。
買った時点で、あなたは「1000億円の赤字」です。で、これをどうやって回収するか。
当然「ソニーのテレビ部門から上がる、毎年の利益」で、回収していくわけです。「利益」以外、手元に残る現金はありませんからね。「売上」は、そこからコストを引きますし、引いた後の数字が「利益」ですから。
というわけで、たとえば「毎年100億」の利益が出るとしましょう。その場合、この「1000億」のテレビ部門を買った費用を、何年で回収できるでしょうか。
答えは「10年」ですね。「1000億÷100億=10年」です。で、これを計算式に直すとこうなります。↓
『買収金額÷毎年の利益=回収にかかる年数』
で、これを専門用語に直すと、下のようになります。
- 買収金額…時価総額
- 毎年の利益…純利益
- 回収にかかる年数…PER
で、下のような計算式になるわけです。
『時価総額÷純利益=PER』
…というように「PERだから、何年で回収できるかがわかる」というわけではないんですね。PERという名前は、
- 「何年で回収できるか」計算した後に、
- 「出る答え」につける名前がなくて、
- とりあえず「PER」とつけた
ということなのです。
投資家の会話の中で、自然発生した
まだ「PER」という言葉がない時代、投資家は下のような会話をしたわけです。
- A「おい、ソニーを今買うと、何年で回収できる?」
- B「12年だね」
- A「ていうか、この『今買うと何年』って、毎回言うのメンドいな」
- B「何か、別の名前をつけるか」
- A「株価と利益の割合…だから」
- B「英語だと、Price、Earning、Ratioだな」
- A「よし、頭文字をとってPERだ」
…という風に、自然発生したわけです。つまり、もしあなたがタイムスリップして、PERという言葉がない時代の投資家になっても―。遅かれ早かれ、あなたは「PER」と同じ指標を、自然と自分で生み出すわけです。
(名前は別のものになるかも知れないですが)
つまり「暗記する」ものではない
何でこういう説明をしたかというと、PERは「暗記しても意味がない」からです。このように「どうして生まれたか」を知っていれば、おのずと「応用がきく」んですね。
なぜ応用が必要なのか―。それは、「PERだけでは、実は何もわからない」からです。なぜ、何もわからないのか説明します。r
PERだけでは、何もわからない理由
おさらいすると、PERは「その株の費用を、回収するまでにかかる年数」でしたね。ということは「少ないほどいい」わけです。「短期間で回収できる」ということですからね。
じゃあ、PERが少ない株が儲かるのか―。現実は「全然違う」のです。
急成長する株は、PERが大きい
PERが大きい―。これはつまり「回収までに、長い年数がかかる」ということ。当然「ダメじゃん」と思うでしょう。
事実、そういう株は「割高」と言われます。しかし、一時期のフェイスブックなど、急成長する株は皆「PERが、異常に大きい」のです。
なぜ、PERが大きくなる?
理由は、「フェイスブックの利益は、来年には10倍になっている」と、投資家が「期待」するからです。
PERの計算式で使う「純利益」。あれは所詮「今年の利益」なのです。もし「来年の利益が10倍」だったとしたら、どうなるでしょう。
回収にかかる年数は「あっという間に10分の1」になるのです。事実、Facebookレベルになると、そのくらいの急成長は珍しくありません。
というわけで、みんな「この株の場合、PERとかどうでもいい」と思って買うんですね。そして、
- 買い手が殺到する
- 株価が上がる
- 時価総額が上がる
- 「時価総額÷純利益」の数値=PERが大きくなる
…というわけです。このフェイスブックの場合、
「経営が悪いから、PERが大きくなった」
のではありません。
「経営が良くて、人気が高すぎたから」
PERが大きくなったのです。つまり「計算上、たまたまそうなった」だけなんですね。
PERの本来の意味が、相場の加熱でずれる
「どんなルールにも抜け穴がある」というのと同じで、PERの意味も「相場の加熱」によって、ズレるのです。
フェイスブックのように加熱する株でなければ、当初の意味が維持されます。しかし、こういう「例外」が登場すると、「当初の意味とは、全然違う計算式」になってしまうのです。
そして言うまでもなく、株で大きく稼ぐには、フェイスブックのような銘柄に投資するのが理想です。ということで「PERが小さければ良い、とは限らない」のです。
結局、PERをどう使えばいいのか?
結論は下の通りです。
- PERが高くても低くても、「その意味」を見極める
- 他の指標も全てチェックする
- 全部の指標を見て「過去の成功パターン」に似ていたら、賭けてみる
- 当然「商品自体」や、「経営陣の素質」も見る
ということです。結局のところ「本質」が一番重要なわけですね。その「本質」を見極める1つの手がかりとして、PERがあるのです。
平均的なPERは「15倍」
東証一部上場の株の倍、PERの平均は「約15倍」と言われています。ということは、
- PER15以上…割高
- PER15以下…割安
…となるわけです。割安株投資(バリュー投資)という手法では、この「PER15以下」の株を買うのが基本といえます。
ただ、割安株投資は「過小評価されている株を買う」というのが本質。過小評価かどうかは「その会社の本質」まで見て判断することです。
というわけで、この「平均PER」というのは、「参考程度」にしてください。
PERは、業界によって違う
業界によって、平均PERは違います。つまり「PERが高いか低いか」は「その業界の平均を見て」判断すべきなのです。
試しに「PERの高い業界・低い業界」を見てみましょう。
- 電気・ガス…75.99
- 石油・石炭…4.63
これは「2015年7月」の平均ですが、実に「約19倍」の差があります。株式市場全体の平均は、「15~16」程度でした。大体いつでも平均はこのくらいに落ち着きますが「業界ごとで見ると、全然違う」というのがわかるでしょう。
PERの調べ方
PERは、ネット上で調べられます。
- 各企業のPER…ヤフーファイナンス
- 業種別・月別PER…東京証券取引所・公式サイト
他のサイトでもOKですが、最大手のこの2つで、簡単に調べられます。多くの投資家が見ている情報なので「他の人たちがどう動くか」を想像するためにも、同じものを見ておいた方がいいでしょう。
「PERを、さらに分析したもの」になると、有料のサービスや雑誌など、情報源は無限に増えます。とりあえず、PERの数値自体は、ネットの無料サイトで、いくらでも見られます。
まとめ ~PERとは~
再度、PER(株価収益率)のポイントをまとめます。
- 「株価の回収に何年かかるか」という数値。
- 時価総額÷純利益=PER
- 東証の平均は「15倍」
- しかし、業界によって全然違う
- PERが低ければいいとは限らない
- 「理由を考える」「他の指標と合わせる」ことが必要
…ということです。PERでも他の指標でも、こうした「本質的な部分」を知ることで、堂々とトレードできるようになってください。