投資スタイルサヤ取り投資法とは?~値動きの似た銘柄で「売り・買い」を同時に仕掛ける手法~

Stock Market Exchange Financial Investment Economy Concept
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サヤ取り投資法とは?

 やり方

 メリット・注意点

 目次

1.『サヤ取り投資法』とは?

サヤ取り投資法とは、「よく似た銘柄を同時に買い、片方は売り、片方は買いの注文を入れる」という手法です。

まず、例え話をします。で、そこからよく湧く疑問を切り口に、仕組みを説明していきます。

『サヤ取り』の由来は、こちらで説明しています)

「サヤ取り投資法の仕組み」の例え話

たとえば、ソフトバンクの株が「東証一部」と「二部」の両方で売られていたとします。で、それぞれの株価が、

  • 一部…1万円
  • 二部…1万500円

だったとしましょう。この場合、

  • 一部で『買う』
  • 二部で『売る』

というだけで、確実に利益が出ますね。「1回当たり500円」と少額ですが、「これをたくさんやればいい」わけです。

1-2.よくある疑問点

この時点で、下のような疑問が湧くでしょう。

  • これはノーリスクだから、みんなやりたがるのでは?
  • 稼ぎが小さい分、元手が大量にいるのでは?
  • というか、同じ株は別の場所では売っていないのでは?

それぞれ解説すると、

  • 皆やりたがる…正解。だから、こういうチャンスはすぐ消滅する
  • 元手が大量にいる…正解。最低でも数百万円は必要
  • 別の場所では売ってない…正解。なので「似てる株」でやる

ここではまず3つ目の「似てる株」から解説します。

1-3.「似てる株」とは?

たとえば「同じ業種」です。

  • 王子製紙
  • 日本製紙
  • 日本航空(JAL)
  • ANAホールディングス

という風ですね。しかし、業種が同じでも当然、「片方だけ上がる・下がる」ということはあります。JALは一時期、経営破綻しましたしね。

ということで、最終的には「似てる株=株価の動きで決める」わけです。

極端な話「全然違う業種だし、理由がわからないけど、50年ずっと連動してきた」という銘柄なら、信用していいのです。

2.「売買の仕方」&「メリット」

「株価が連動している銘柄」を、実際にどう売買するのか、説明します。同時にそれが、メリットの説明になります。

2-1.連動している株を、どう売買するか

たとえば「本来の株価」が、下の通りだとします。

  • 王子製紙…1万円
  • 日本製紙…1万円

「いつもこの株価」ということですね(あくまで例えです)。

で、それがある日、

  • 王子製紙…8000円
  • 日本製紙…1万2000円

…と、差が開いていた。これまでずっと「両方1万円」だったら、

  • これは多分、異常事態だ
  • すぐに両方1万円に戻るだろう

と想像できます。もちろん「外れる」かも知れませんが「今までずっとそうだった」ので、「必ず戻る」と仮定します。

で、戻るとしたら、下のようにすれば儲かるわけです。

  • 王子製紙…買う
  • 日本製紙…売る

王子製紙の方は「ただ買うだけ」です。「8000円の株」が、そのうち「1万円に戻る」わけですから、確実に儲かりますね。

厄介なのは「日本製紙」の方です。「現時点で株を持っていない」のに、どうやって売るのか。これは、「空売り」という方法を使います。

2-2.空売りとは?

空売りとは「株券を借りてきて、売る」ということです。つまり、この例だと、

  1. 日本製紙の株を持っている人から、「借りる」
  2. 「4月1日までに返す」などと約束する
  3. で、借りた株券を「売る」
  4. 今の価格が「1万2000円」なので、その価格で売れる

で、この時点で「1万2000円」が手元に入ります。問題は、「人から借りた株券を、売ってしまった」ということ。期限までには、必ず用意して返さないといけませんね。

で、時間が経って…、

  1. 日本製紙の株価が「1万円」に戻った
  2. その時、買う
  3. で、買った株券を持ち主に返す
  4. 差額の2000円は、自分の利益になった

…とやれば、いいのです。「利益も出る」し、「借りた株券も返せる」わけです。これで、

  • 王子製紙…2000円の利益(8000円で買い、1万円で売った)
  • 日本製紙…2000円の利益(1万2000円で空売り、1万円で買い戻した)

…となりました。合計「4000円」の利益ですね。

2-3.サヤ取り投資は「未来予測」である

要は、サヤ取り投資法は「未来予測」なのです。株は上がるにしても下がるにしても「将来こうなる」とわかっていれば、必ず儲かるんですね。

(下がるとわかっている場合、今回の日本製紙のように「空売り」すればいいのです)

で、どうすれば「わかっている」株を探せるか。という時に「連動」に目をつけるわけですね。

以下、「連動」をもう少し正確に説明します。上の例では「同じ1万円」でしたが、当然ながら実際は「同じ金額」ということはないので。

2-4.金額は違っても「差額」が同じならいい

「連動」で重要なのは「同じ金額」ではなく、「同じ差額」なのです。「差額が常に一定」というペアならOKなんですね。

たとえば、「王子製紙・日本製紙」の差額が「いつも2000円」だったとします。仮に「王子製紙がいつも上」とします。

そうすると「差額1000円」に縮まった時は、下のように「未来予測」できるのです。

  • 王子製紙が「不当に落ちてる」確率が高い→王子製紙は、これから上がる
  • 日本製紙が「不当に上がってる」確率が高い→日本製紙は、これから下がる

ということです。逆に「差額3000円」に広がった時は、

  • 王子製紙が「上がりすぎてる」確率が高い→これから下がる
  • 日本製紙が「下がりすぎてる」確率が高い→これから上がる

…と予想できるわけですね。で、

  • 「上がる」方を買い、
  • 「下がる」方を空売りする

というだけです。「空売り」をするのは「現時点で持っていない」し「現時点で買ったら損する」からですね。(下がるのがわかっているので)

3.リスク&失敗の可能性

サヤ取り投資法はよく「ノーリスク」と宣伝されますが、成果が出る以上、リスクはあります。

この手法は有効なだけに、勘違いされてしまうのは惜しいことです。正しい認識のために、リスクや失敗するケースもまとめます。

3-1.サヤ取り投資法で、失敗するケース

当然ですが、サヤ取り投資法でも失敗します。サヤ取りの予想はあくまで「これまでそうだった」というだけの根拠だからです。

  • これまで、ずっと「差額2000円」だった
  • だから、これからも同じだろう

という推測に過ぎないんですね。今後は「その差額が変わる」可能性もあるのです。

  • A社…経営が順調で、ガンガン伸びる
  • B社…内部に問題があり、どんどん落ちる

という可能性もあるのです。また、ここまで極端でなくても「1年や2年だけ、差額が変わる」ということはあります。

この場合は、サヤ取り投資法は「負け」となるわけです。100戦100勝ではないんですね。よほど「差額が変わらない」ペアを見つけない限りは、サヤ取り投資法でも「負ける」ことはあるのです。

3-2.サヤ取り投資法が「ノーリスク」というのは嘘?

これは嘘です。「ローリスク」なら正解です(代わりに努力が必要だったり、稼ぎが小さかったりしますが)。

もし最初の例え話のように

  • ソフトバンク株が、
  • 東証一部と二部で、
  • 違う価格で売られている

という場合だったら、確かにノーリスクです。そして、こういう例え話だけをして終わる解説記事も、よくあります。

しかし、実際には「同じ株が、別の場所で売っていることはない」のですから、こんなに簡単ではないのです。

  1. あくまで「連動してる」だけの株
  2. その「金額の差」が、今後も続くと仮定する
  3. その仮定に立って、売買する

…というだけなのです。当然「仮定が間違っている」可能性もあるわけですね。

3-3.「連動」を徹底調査すれば、リスクを下げれる?

「スーパーコンピューターで、過去の連動を徹底調査すれば、間違いないペアが見つかるのでは?」と思う人もいるでしょう。その通りです。「絶対」ではありませんが「かなり高確率」のペアは見つかります。

しかし、それは当然「ヘッジファンド」などが既にやっています。彼らは「圧倒的なスパコン」を使って、日々自動的に、こういう「連動銘柄」をチェックしています。

そして「差が開いた」瞬間、1000分の1秒程度で、取引をしてしまうのです。つまり、サヤ取りの「絶対的チャンス」は、「発生した瞬間、消える」のです。

(例えとしての「瞬間」ではなく、文字通りの「瞬間」です。そのくらい早いのです)

ということで、個人投資家は「ノーリスクのサヤ取り投資」など、絶対にできないんですね。これをできると謳うソフト・情報商材・塾などは大体が詐欺&偽物なので、注意してください。

3-4.まとめ ~あくまで「予想の材料」に~

結局、「サヤ取り投資法だけで勝負する」というというのは、「ファンドしかできない」のです。私たち個人投資家は、この投資法の「連動する銘柄に着目する」という部分を、取り入れるべきなんですね。

(この発想は、業界や会社そのものを考える、投資の本質にもつながっているので)

  • いつも、2000円の差額である
  • だから、王子製紙と日本製紙の、どっちかがおかしい

という推測は、他の投資法でも、大きなヒントになります。そこから、

  1. 何が原因でこうなった?
  2. どっちかの会社に、何かイベントがあったのか?
  3. 過去に似たようなケースはあったか?

などと探っていくと、「予想」の精度はさらに上がるでしょう。というように、あくまで推測・研究のための「一つのきっかけ」として「連動銘柄」に着目すべきなのです。

4.補足の説明

ここでは、サヤ取り投資法の「名前の由来」や、よく宣伝される「世界三大利殖法」という用語について、解説します。

4-1.『サヤ取り』の名前の由来

「サヤ取り」の「サヤ」というのは「差」のことです。まとめると、

  • 江戸時代の米相場が起源(という説が強い)
  • 当時は、差のことを「差也」(さや)と書いた
  • これが現代で、「サヤ」「鞘」となった
  • 「鞘」は、ただの当て字。刀の鞘とは関係ない

ということです。今後、投資に関する詐欺商材で、「江戸時代の米相場でも使われていた手法です!」などというものが出てきそうですが、「所詮、名前の由来」に過ぎないので、買わないようにしてください。

4-2.「世界三大利殖法」の一つ?

サヤ取り投資法を宣伝するサイトや教材でよく「サヤ取りは、世界三大利殖法の一つ」と書かれています。「サヤ取り」の他も合わせて書くと、

  • サヤ取り
  • サヤすべり取り
  • オプション売り

の3つとのこと。とりあえず、日本語の検索でヒットするのは、サヤ取り投資法を宣伝する教材やサイトです。英語ではヒットしません。(「Big Three Money Making」など)

単純にネットに情報がアップされていないだけかも知れませんね。最初の出典は、2007年に出版された『サヤ取り入門』という書籍です(確認できる限り)。

出版社はパンローリング社ですし、著者の羽根英樹さんという方も実績が豊富な信用できる投資家の方なので、出典自体は信用していいでしょう。

「世界七不思議」というのも、もともと紀元前の2世紀に、ビザンチウムのフィロンという旅行家が決めて、書き残したものです。要するに、フィロンの「オレ的、世界の七不思議」が、後世まで語られて定着しただけなのです。

そういう点では「世界三大利殖法」というのも、投資家によって自由に定義していいわけですね。そのため、この定義もまだ定着していないだけで、正しいのです。

4-3.まとめ ~『○○投資法』にこだわらない~

相撲には「寄り切り」という技があります。しかし「寄り切りだけで勝っている」力士など、一人もいません。

「寄り切りが得意」という力士はいますが、「それだけで勝てる」という人は、一人もいないのです。株の『○○投資法』というのも同じです。

  • その投資法がドンピシャの場面でのみ、使う
  • その投資法の「仕組み」を知ることで、株への理解を深める

というために、「○○投資法」はあるんですね。サヤ取り投資法も、その他の手法もすべてそうだと思って、投資の記事を読んでください。

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