財務諸表の読み方貸借対照表とは?~株式投資での見方・活用の仕方、総資本・資産の意味など~

成長率

成長率

貸借対照表は、その会社が、

  • どうやってお金を集め
  • どういう形で保有しているか

がわかる表です。

  • どうやって集め…総資本(帳簿の右)
  • どうやって保有…資産(帳簿の左)

…という風に、帳簿の左右に分けて記録されています。まず、一覧にすると下のようになります。

  • 資産
    • 流動資産
    • 固定資産
  • 総資本
    • 負債
      • 流動負債
      • 固定負債
    • 資本

以下、それぞれの意味を説明していきます。

「総資本」とは?

貸借対照表の総資本は、

  1. 資本
  2. 負債

の2通りに分かれます。簡単に言うと、

  1. 資本…集めたお金&稼いだお金
  2. 負債…借金

です。

「資本」は2通りある

上の「資本」は、下の2通りに分かれます。

  1. 出資金…投資家から集めたお金
  2. 利益…事業で稼いだお金

簡単に言うと『集めた』お金と、『稼いだ』お金ですね。

「負債」も2通りある

「負債」も、下の2通りに分かれます。

  1. 流動負債
  2. 固定負債

それぞれの意味・違いは、

  1. 流動…支払いが『1年以内』
  2. 固定…支払いが『1年以後』

ということです。「短期の借金」と「長期の借金」ですね。具体的には下のようなものが、それぞれの負債に当たります。

  • 流動負債
    • 買掛金
    • 短期借入金
  • 固定負債
    • 社債
    • 長期借入金

他にもいろいろありますが、「流動・固定」で、それぞれこのような負債があります。

「資産」も2通り

ここまでは「帳簿の右側」の、「負債&資本」について語ってきました。そして「帳簿の左側」の「資産」も、やはり2通りあります。「負債」と同じく、

  • 流動資産
  • 固定資産

というように「流動・固定」の2種類に分かれています。

「流動資産」「固定資産」の種類

実際、どんな資産が「流動・固定」に分類されるのか、一覧にします。

  • 流動資産
    • 現金
    • 預金
    • 売掛金
    • 有価証券
  • 固定資産
    • 不動産(建物)
    • 不動産(土地)
    • 機械

このようなものが「流動資産」「固定資産」に分類されます。他にもありますが、主だったものはこれらです。

貸借対照表を、どう見ればいいか?

株式投資では、貸借対照表を動見ればいいのか。当然人それぞれですが、特に重要なのは「自己資本比率」です。

  • 資産…流動資産・固定資産
  • 総資本…流動負債・固定負債・資本

のうち、右下の「資本」が大きいということですね。

借金に頼らず、資金調達している

総資本は「どうやってお金を調達しているか」というデータです。そして「資本」は、

  • (投資家から)集めたお金(投資家から)
  • (事業で)稼いだお金

でしたね。「流動負債・固定負債」よりも、この「資本」が大きいということは、「借金に頼らずに経営している」ということです。そのため「リスクの小さい会社」といえます。

「借金はいけない」わけではない

企業のほとんどは、借金をして経営しています。そのため、「負債があってはいけない」ということではありません。

たとえば、ソフトバンクがボーダフォンを買収した時には「2兆円」の借金をしています。企業経営というのはそういうものなので「借り入れが悪い」のではなく「どんな理由で借りているか」が重要なのです。

ただ、いざという時「自己資本比率が高い」企業の方が、「倒産しにくい」のは確かです。そういう意味では「ローリスク・ローリターン」な銘柄と言えるかも知れません。

(ボーダフォン買収時のソフトバンクのような「借り入れをして、勝負をかけている」企業の株が、ハイリスク・ハイリターンということですね)

自己資本比率は、いくつなら優良株?

自己資本比率がいくつあれば、優良銘柄といえるか―。ポイントは下の通りです。

  • 東証一部上場の平均は『48.8%』
  • 業界によって、自己資本比率は大幅に違う

ということです。『48.8%』は「2014年3月」の数字ですが、年代が多少変わっても、大体このくらいの数値です。

実際には、自己資本比率は「業界によって全然違う」ので、「全体の平均」は直接は使えません。「その業界自体の将来性」を確かめる、などの使い方がいいでしょう。

個別の株の場合「その業種の自己資本比率の平均」を見るべきです。

業種別・自己資本比率の一覧

実際、業種ごとにどのくらい違うのか。それぞれの自己資本比率を一覧にします。(すべての業界だと多いので、一部紹介します)

  • 原油・天然ガス…71.83%
  • 通信業…62.48%
  • 食料品製造業…52.63%
  • 小売業…45.41%
  • 不動産業…34.25%
  • 航空運輸業…25.61%
  • 電気業…19.26%
  • 銀行・信託業…9.31%

以上は「2014年1月末」時点のデータですが、「9%~70%」まで、実にすべての階層に散らばっています。

特に銀行などは「利用者からお金を借りて、それを回す仕事」なので、自己資本比率が低くなるのは当然です。というように、業界によって「自己資本比率が高い・低い」が分かれるわけです。

株式投資で自己資本比率を見る時は、「業界の平均と比較して」見るようにしましょう。

業界内での、自己資本比率の比較方法

実際にデータを見てみるのが一番でしょう。たとえば「航空運輸業」で、東証一部の主要5社を比較します。

  • スカイマーク…63.07%
  • 日本航空(JAL)…47.93%
  • ANAホールディングス…35.46%
  • スターフライヤー…28.25%
  • 日本貨物航空…-46.08%

このように、業界の中でもさらに自己資本比率がバラバラになります。平均こそ「約25%」ですが、実際には「63%~マイナス46%」まで、「約110%」の差が付いているわけですね。

自己資本比率も、参考程度に

上のランキングを見ると、「スカイマーク」がダントツのトップになっています。しかし、2015年3月に経営破綻したのは、ご存知の通りです。

2014年1月末の時点で、自己資本比率が業界1位だったのに、わずか1年ちょっとで経営破綻したわけですね。実際、「自己資本比率が高いのに、何で倒産したのか?」という疑問が、Yahoo!知恵袋などにも寄せられています。

簡単に言うと、スカイマークは「航空機をリースで借りていた」のですが、これは帳簿には出てこない数字だったんですね。これも計算した「現実の自己資本比率」は、業界平均の半分の「約13%」だったのです。

というように、「自己資本比率は参考程度にする」か「四季報に出てこない、本当の自己資本比率」を調べる努力をしてください。

貸借対照表の補足

最後に、貸借対照表についていくつか補足をします。

  • 読み方…たいしゃくたいしょうひょう
  • 「賃借対照表(ちんしゃくたいしょうひょう)」は間違い

「賃借対照表(ちんしゃく)」は、不動産の物件などでも存在しません。完全な誤表記です。

しかし、大手企業が発表するデータでもしばしば間違っていることが多く、その影響を受けて、さらに一部の投資家や市民なども間違えてしまっている…という状態です。

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