損益計算書とは「利益」を見るための書類。「売上・コスト」の両方が一覧になっていて、その「差額=利益」がわかるようになっています。(損益、というのはそういう意味です)
そして、損益計算書には「5つの利益」が書かれています。投資でも重要となる、これらの利益の意味を説明します。
「5つの利益」とは?
利益とは「コストを引いた後」の数字です。そして、そのコストは「地球が吸収する」わけではありません。「誰か」が持っていったのです。
「誰か」は個人の場合もあるし、「役所・取引先」などの「組織」の場合もあります。とにかく、「コスト=誰かに取られるお金」なのです。
で、「誰に取られたか?」を基準にして、「5つの利益」が生まれるわけですね。「取られた相手別」にまとめると、下のようになります。
「5つの利益」の一覧
誰に取られる? | 取られた後の利益 |
---|---|
取引先 | 売上総利益 |
従業員 | 営業利益 |
債権者(銀行など) | 経常利益 |
ランダム(特別損失) | 税引き前当期利益 |
国・地方(税金) | 当期利益 |
こうやって取られる度に、お金が小さくなっていきます。そして、最後に残った「当期利益」が、一番小さい金額ですね。これが「最終の利益」です。
株主がもらうのは「当期利益」
株主がもらえる「配当金」は、この「当期利益」から出ます。絶対に配当がもらえるわけではないし、もらう必要もありません。しかし、「もし配当をもらうとしたら」ここから出ます。
「もらう必要もない」というのは、「その分、事業に再投資して、株価を釣り上げてくれた方がいい」こともあるからです。実際、絶好調の企業は配当を出さずに、ガンガン投資して「業界の一人勝ち」を狙うことが多いです。
(また、株主もそれを応援することが多いです)
というわけで、当期利益は「株主がもらうため」にあるのではなく、「その企業がうまく行っているか」を確かめるための数字…と思った方がいいでしょう。
損益計算書の例
「5つの利益」は、実際に損益計算書を見るとわかりやすいです。下が損益計算書の例ですが、「黄色の部分」が「5つの利益」です。
科目 | 金額 | 計算式 | お金の出入り |
---|---|---|---|
売上高 | 25000 | 顧客から | |
売上原価 | 12000 | 取引先へ | |
★売上総利益 【粗利益】 (売上高-売上原価) |
13000 | =25000-12000 | |
販売費・一般管理費 | 4000 | 従業員へ(給料) | |
★営業利益 (売上総利益-販管費) |
9000 | =13000-4000 | |
営業外収益 | 500 | ||
営業外費用 | 800 | 債権者へ(銀行など) | |
★経常利益 [営業利益+(営業外収益-営業外費用)] |
8700 | =9000+500-800 | |
特別利益 | 100 | ||
特別損失 | 400 | ||
★税引き前当期利益 [経常利益+(特別利益-特別損失)] |
8400 | =8700+100-400 | |
法人税などの税金 | 1000 | 国・地方へ | |
★当期利益 (税引き前当期利益-法人税などの税金) |
7400 | =8400-1000 | 株主へ |
前の説明で書いた「お金を取られる相手」が、右側に書かれていますね。(最初の「顧客」だけは、お金を運んでくれる人です)
で、最後の「取られる相手」は株主ですが、これは投資家にとっては「自分のこと」なので、良いことです。「当期利益が大きいほど、投資家にとっては良い」わけですね(基本は)。
損益計算書の項目の解説
上の表のそれぞれの項目について説明します。まず「売上高」です。
- 売上高…すべての収入。本業以外も含む。会社の規模を表す。
続いて「5つの利益」です。
- 売上総利益…売上から仕入原価などを引く。給料などは引いてない
- 営業利益…本業の利益。給料・家賃など、本業のコストを引いている
- 経常利益…「本業以外の収支」も計算。これが「日常的な」利益
- 税引き前当期利益…経常利益に「特別な収支」を加える
- 当期利益…税引き前当期利益から、税金を引く。最後に残るお金
…ということです。たとえば「八百屋さん」の場合、
- 売上総利益…売上から「野菜の仕入れ値」を引く
- 営業利益…[1]から、「バイトの給料」「テナント代」を引く
- 経常利益…[2]から、銀行への利息の支払いを引く
- 税引き前当期利益…地震で修理費がかかったので、[3]からそれを引く
- 当期利益…[4]から、納税した分を引く
もし「地震」がなかったら、「4.税引き前当期利益」の計算は、関係ありません。ということで、「3.経常利益」が「いつも通りの利益」となります。「経常」というのは、そういう意味なんですね。
株式投資での使い方
株式投資では、損益計算書をどう使うのか。まず調べ方は、
- 会社四季報
- 各企業のサイトのIR情報
などです。すでに各証券会社で口座を持っている場合、会員ページで「財務諸表分析ツール」が使えます。これは「過去5年分・10年分」などのデータをまとめて見ることができ「その企業の業績の推移」がよくわかります。
チェックしたい会社名(銘柄名)を入れるだけなので、非常に簡単な作業です。グラフも表示されるので、パット見だけでその企業の成長度合いを、大まかにイメージすることができます。
損益計算書をどう見るか?
見方のポイントはたくさんありますが、たとえば下のようなものです。
- 営業利益が成長しているか
- 特別利益・特別損失の影響はどうか
「営業利益が成長している」ということは「本業が成長している」ということ。「他企業への投資収入」などの、一時的な収入によって利益を上げているわけではない、ということです。そういう企業は、将来性が高い(ことが多い)です。
「特別利益・特別損失」については、これらが異様に大きい場合「これらなしの場合はどうなるか」が重要です。一時的に利益が落ちているけど、やむを得ない災害などのせいなのか。あるいは逆に「不動産の売却」などで、一時的に収入が増えただけなのか…。ということですね。
こうしたことを総合的に判断するのが「損益計算書の使い方」です。もちろん、損益計算書の数字の裏を見るには「その企業自体」を見る必要があります。最終的には「ビジネスそのもの」「経済そのもの」を知る必要があるんですね、投資で長く成功するには。