重要指標の使い方PBR(株価純資産倍率)とは ~計算式・意味・投資での使い方など~

増加

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PBRは、簡単に言うと「今、その会社が解散したら、いくらもらえるか」です。

たとえばあなたが「スタバ株を10万円」買ったとしましょう。そして、スタバが倒産したとします(あり得ないですが)。

その時、普通だったら「10万円以上返ってくる」ことはありません。10万円以下…、下手したら半額やゼロ、というのが普通でしょう。

しかし、株式市場はしばしば「歪み」が生まれるもの。理論的にはあり得ない「10万円以上返ってくる」という株が、たまにあるのです。PBRは、そういう「お得な株=割安株」を見つけるための指標です。

*この記事は、前半は「わかりやすさ重視」で行きます。そのため「厳密には違う」という部分がいくつかあります。それは最後でまとめて補足します。

なぜ「解散した時のお金」がわかるのか?

まず、あなたがA社の社長だとします。そして、A社をたたむことになりました。

この時、当然株主に「残っているお金」を配分しなくてはいけません。ゼロだったら配分できませんが、少しでもあるなら、しないといけません。

で、どこからそのお金を出すか。当然「会社に今あるお金」ですね。これを「資産」と言います(*)。

つまり、投資家があなたのA社の株を買おうとする時、この「資産」を見て、こう思うのです。

「もし、このA社が今倒産したら、俺たち株主が、この資産を分け合うわけだな」と。

分け合った時の、一人当たりの取り分は?

当然ですが、一人当たりの取り分は「資産÷投資家の人数」で出ます。正確に言うと、それぞれの投資家の「持ち株の数」が違うので「資産÷株式数」です。もしA社のデータが、

  • 資産…1億円
  • 株式数…100万株

…という風だったら、「1株当たりの資産…100円」となります。それで、このA社の株を、投資家が今から買う場合、こう思うわけです。

「買ってすぐ、このA社が倒産したら、俺の取り分は100円だな」と。

で、株価を見てみると…

「A社が解散したら100円もらえる」ということがわかった後、投資家Bさんが、A社の株価をチェックしました。「まあ、解散価値が100円なんだから、株価は当然100円以上だろ」と思いながら。

しかし、A社の株価を見て、Bさんは驚愕します。何と「株価80円」だったからです。Bさんが払う株価より、解散時にもらえるお金の方が多い―。これはつまり、「たっぷり資産がある会社」ということです。

で、Bさんはこう思います。

  1. これだけ払えるということは、資産があるのは間違いない
  2. 資産があるということは、普通は「経営が順調」ということだ
  3. なのに、株価が安い…。つまり人気がない
  4. これは何でだ?

「何でだ?」で終わっていますが、実は、解散価値だけではこの原因がわからないのです。

わからないと言っても、主に下の3通りのどれかになります。

  • 1.『投資家が、良さに気づいていない』
  • 2.『資産の数字がおかしい』
  • 3.『資産はあるが、それを食い潰すだけの会社』

以下、それぞれ説明します。

1.『投資家が、良さに気づいていない』

  1. 資産は、本当にたくさんある
  2. いい株なのに、みんな気づいていない
  3. だから、解散価値が高いのに、株価が異様に安い

2.『資産の数字がおかしい』

  1. 実は「資産」の数字がおかしい
  2. その業界の特殊な会計で、たまたま一時的に多く見える
  3. もしくは、その会社が粉飾決算をしている
  4. 賢い投資家は、それに気づいている
  5. だから、解散価値が高いのに、株価が異様に安い

3.『資産はあるが、それを食い潰すだけの会社』

  1. 資産の数字は、間違っていない
  2. しかし「ただ資産があるだけ」の会社と思われている
  3. 今後は「ただ、貯金を食い潰すだけ」の会社、と思われている
  4. だから、投資家が株を買いたがらない
  5. だから、解散価値が高いのに、株価が異様に安い

どの原因だったら、良い?悪い?

  • 原因(1)…良い株。買った後で、みんなが価値に気づけば、値上がりする。
  • 原因(2)…悪い株。特に粉飾決算は最悪。
  • 原因(3)…悪い株。ただ、あまりないケース。

この原因(1)の株を「割安株・バリュー株」と言います。そして、そういう株に投資することを「割安株投資・バリュー投資」と言います。

割安株投資は、こういう株を見つけることが全てです。そして、それを見つけるための指標「PBR」が必須なのです。

ということで、ここからは「PBRの正確な説明」をします。(ここまでの内容は、かなり噛み砕いているので)

PBRの計算式

PBRの計算式は、下の通りです。

『株価』÷『1株あたり資産』=PBR

わかりやすく書くと、こうなります。↓

『今、買う場合の値段』÷『解散した時、1株あたりもらえる金額』=PBR

で、これをさっきの「株価…80円」「解散した時…100円もらえる」というA社の株で、当てはめると、こうなります。↓

『80円』÷『100円』=0.8

…というように「PBR=0.8」となりました。で、この「100円もらえる株」は「お得な株」でしたよね?(資産に間違いがなければ)

ということは『PBRが1以下』=『お得な株』と言えるのです。

「PBR1以下」は、割安株

ということで、PBRの見方はこうなります。

  • PBR『1以下』…割安(買った方がいい)
  • PBR『1以上』…割高(買わない方がいい)

繰り返しますが、あくまで「資産の数字が正しかった場合」です。さっきの「原因(1)」の場合ですね。

実際には、PBRは『1以上』が当たり前

実際には「PBR…1」というのは、かなりいい数字です。理由は「倒産した時、最初に払ったお金が、全部返ってくる」からです。始めに書いた通り、それは「めったにない」ですよね。

普通は「一部しか返ってこない」のです。つまり『株価÷返ってくるお金』の「株価」の方が大きいのです(最初に払うお金ですね)。

割り算で、左側の方が大きいので、計算の答えは「1より大きく」なります。つまり「PBR…1以上」です。

ということで、PBRは「1以上が当たり前」なんです。

東証の平均PBRは「1.1程度」

東証一部上場の企業の場合、平均のPBRはいくつか―。これは、大体「1.1」です。「1999年1月~2015年8月」の、約16年の平均値です。

新しいデータに絞ると「2015年1月~8月」の平均値は「1.2」です。16年間の平均値とも大体同じなので「1.1前後」が、今後も続くと考えていいでしょう。

東証の平均PBRが1以下のケース

実は、これは意外と多いです。たとえば2009年の一部上場の平均PBRは「0.8」でした。

原因は「リーマンショック」です。ほぼすべての株価が落ちたからですね。PBRの計算式は「株価÷1株あたり資産」なので、株価が下がれば「1以下になりやすい」わけです。

PBRの厳密な説明・補足

最後に、厳密な補足をします(冒頭にも書いた通りです)。

  • PBRとは?…株価純資産倍率
  • 何の略?…Price Book-value Ratio

上の英単語の意味は、

  • Price…株価
  • Book-value…簿価(帳簿価格)
  • Ratio…割合(読みはレシオ)

つまり「株価&簿価の割合」ということですね。

厳密なPBRの計算式

  • 計算式…株価÷1株あたり株主資本=PBR
  • 株主資本とは?…純資産・自己資本と同じ意味

「株主資本」という言葉が、ややこしいですね。どうせ同じ意味なら「純資産」と書いてくれた方が、素人にはわかりやすいのですが。

で、この「1株あたり株主資本(純資産)」は、BPSといいます。たまに、PBRの計算式が「株価÷BPS」と書かれていることもありますが、意味は変わりません。

*「1株あたり株主資本」という言葉は長いので、「BPS」を使うわけです。

BPSの計算式は「株式指標÷発行済み株式数」。これも言い換えると「資産÷株式数」です。はじめの方で説明した「倒産した時、資産を分け合う」イメージですね。

まとめ ~PBRは、あくまで1つの指標~

というように「PBRの本質」を解説してきました。少し長くなりましたが、「株をまったく知らない人」に説明するためには、こういう喩え話などが、必要かと思います。

ベテランの方でも、初心者にPBRなどの説明をする時は、かなり苦労するでしょう。もしそういう説明が必要な時に、この記事が参考になれたら、幸いです。

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