重要指標の使い方PCFR(株価キャッシュフロー倍率)とは ~PERとの意味の違いなど~

株価推移

株価推移

PCFRとは、「その株を買ったら、何年で費用を回収できるか」という数値です。(厳密な説明は最後にします)

別の指標「PER」を知っている人は「PERと同じじゃん」と思うでしょう。そうです、意味は同じです。

ただ、PERには「盲点がある」のです。その盲点を補足するのが「PCFR」です。

PERの盲点とは?

PERの盲点は「売上をどんどん設備投資に回している絶好調の企業が、評価されない」という点。どういうことか説明します。

まず、PERは「その株を買ったら、何年で費用を回収できるか」という数値です。で、この「何年」というのをどう出すか。まず「計算式」から説明します。

PERの計算式

計算式は、『時価総額÷純利益=PER』です。

時価総額というのは、「会社をまるごと買う時のお金」です。たとえばあなたが吉野家を買い取ったとしましょう。

で、吉野家全株式を取得するための投資資金として5000億円のお金を使いました。このお金を、どうやって回収するか―。言うまでもなく「毎年の利益から」ですよね。

つまり『時価総額÷純利益』というのは、『買い取った総額÷毎年入るお金』ということです。こうすれば「何年で回収できるか」がわかるわけですね。

この「何年」という数字が「PER」です。「PER=年数」と考えてもいいです。

回収にかかる年数は短いほどいい。なので「PER=小さい方がいい」となります。

この何が問題なのか

問題は「利益」に着目していることです。確かに、実際にお金を回収するためには「利益」が大事です。

しかし、じゃあ「利益を出している会社が偉いのか」というと、そうとは限りません。実は「利益を出してないけど、偉い」会社があるのです。それが、先に書いた「ガンガン設備投資している会社」です。

  1. たくさん設備投資する
  2. コストがかかる
  3. 利益が小さくなるか、ゼロになる

…ということです。利益は出ていなくても、ガンガン設備投資しているので、今後急成長する可能性があります。

下手に利益を出して「貯金」しているお堅い会社より、こういう「絶好調」の会社の方が、実はいいことも多いんですね。そのため、利益を重視する「PER」だけでは、問題があるのです。

そこで「現金の流れ」を見る

ということで「利益」ではなく「現金の流れ」を見るべきでは?…という発想が出ます。「現金の流れ=キャッシュフロー」です。

このキャッシュフローを取り入れたPER、それが「PCFR」なのです。『E』の部分が『CF』に変わっただけです。もちろん『CF=キャッシュフロー』です。

日本語だと「株価キャッシュフロー倍率」と言いますが、このPCFRの説明のため、まず「キャッシュフロー」から説明しましょう。

キャッシュフローとは?

キャッシュフローとは「お金の流れ」です。

  • (1)入ってくるお金…キャッシュ・イン・フロー
  • (2)出て行くお金…キャッシュ・アウト・フロー
  • (1)-(2)の収支…キャッシュフロー

ということです。要するに「収支」です。意外と簡単ですね。

「収支」も「利益」も同じでは?

「収支」は、要するに「利益」です。そして、PERがダメな理由は「利益を重視しているから」でしたよね。

となると「キャッシュフローも、結局利益のことなんだから、同じじゃん」と思うでしょう。その通りです。「ただのキャッシュフロー」だと、まったく同じなのです。

では、「ただのキャッシュフロー」ではなく、何なのか。実は「営業キャッシュフロー」という数字を、PCFRでは使います。

営業キャッシュフローとは?

これは「本業の収支」です。普通のキャッシュフローは「本業以外」の収支もすべて含んでいます。しかし「営業~」は「本業の分しか含まない」わけですね。

で、この「本業のために必要なコスト」には、「設備投資」は含まれていません。設備投資は「投資キャッシュフロー」に含まれます。

キャッシュフローは、下の3通りに分かれるのですが、

  1. 営業キャッシュフロー
  2. 投資キャッシュフロー
  3. 財務キャッシュフロー

本業の収支は「営業」、設備投資は「投資」に含まれるのです。

設備投資している成長企業が、評価される

この「営業」「投資」を分けたキャッシュフローによって、「急成長して、ガンガン設備投資している企業」が、評価されます。

「営業キャッシュフロー」では、設備投資のコストは引かれないからですね。普通の「キャッシュフロー」だったら「利益なし」とされる企業。これが「営業キャッシュフロー」だったら「莫大な利益」となるのです。

PCFRは、これを本当の利益と見なす

ということで、PCFRはPERと違って、こちらの「営業キャッシュフロー」を、本当の利益と見なすわけです。これを使って「何年で回収できるか」を計算するんですね。

PCFRとPERは「両方必要」

ここまでの内容だと「PCFRの方が正しい」と思う人もいるかも知れません。実際、「PERより、PCFRが大事」という投資家もいます。

しかし、結論は「両方大事」です。株のどんな指標でも「それだけでOK」というものはないし、逆に「まったく不要」という指標もありません。

多くのデータを集めて「過去にこれと似た事例はなかったか?」と探して、同じパターンの株が、その後どうなったかを参考にする…。という風に使うのです。

(将棋の棋譜に似ていますね)

もちろん、この使い方もほんの一例。あらゆるデータをどう使うかは、その投資家次第です。

(ちなみに、PCFRのいい企業は「設備投資が当たれば」急成長しますが、外れたら悲惨…という見方もできます)

PCFRの厳密な説明・補足

最後に、PCFRの厳密な説明、補足をしておきます。まとめとして、ご覧ください。

  • PCFR…株価キャッシュフロー倍率
  • PCFRとは…株価が、1株当たりのキャッシュフローの何倍に当たるか、を見る
  • 何がわかる?…その株が割安かどうか
  • どういう数字がいい?…小さいほどいい
  • 計算式…株価÷1株当たりの営業キャッシュフロー
  • 1株あたりの営業キャッシュフロー=営業キャッシュフロー÷発行済み株式数

…以上、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)の意味や見方を解説しました。PERや他の指標と合わせて、参考になれたら幸いです。

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