1つ前の記事では、『ROE=PBR÷PER』で出せる理由を説明しました。「数式的に、そうなる」という理由です。
(ROEが『PBR÷PER』で出せる理由(1)『数式を使った解説』)
で「数式的にそうなる」ということは「本質的な部分も、そうなる」はずなんですね。ここではその「本質的な説明」をします。
『ROEの計算式』をおさらい
『ROEの計算式』は2通りありました。
- ROE=利益÷資産
- ROE=PBR÷PER
1つ目については、『ROEとは?』の記事を読んで下さい。2つ目は『数式~』で証明しています。
で、どっちも「ROE=■÷●」という形なんだから、
- PBR…上の式の「利益」に該当
- PER…上の式の「資産」に該当
となっていいはずです。つまり、
- PBR…利益
- PER…資産
となるわけですね。少し長めになりますが、これを理解すると、
- ROEとは何か
- PBRとは何か
- PERとは何か
が、さらにハッキリします。
- これらの意味をハッキリさせたい人
- 初心者に、わかりやすい説明をしたい人
は、ぜひ読んでみてください。
まず、ROEの意味を、おさらい
ROEの意味は「資産を使って、何倍の利益を出したか」でしたね。もっと短く言うと「資産を何倍にしたか」です。
では「資産を数倍にする」には何が必要か。当然ですが、まず「資産」を手に入れることです。
「会社」という資産を手に入れる
会社は資産です。「不動産」が巨大になったようなものです。だから「時価総額」を出せば、アップルだって買えます。
で、あなたがアップルを買うとします。時価総額が「1兆円」としましょう。
1兆円は持っていないので、銀行から借ります。で、アップルを買収しました。問題はここからです。あなたはこう考えます。
- 確かにアップルは買えた。
- しかし「1兆円の借金」もできてしまったぞ。
- これを完済しない限り「ずっと赤字」だ。
- つまり、僕にとってまだ、アップルは「資産」じゃない。
- アップルが「資産」になるのは、「借金を完済」してからだ。
- つまり「時価総額を回収してから」だ。
- ああ、何年かかるだろう…。
株の知識がある人は、ここで気づいたでしょう。この「何年かかるだろう」が、まさに「PER」なのです。PERの式は、
『時価総額÷毎年の利益』
です。つまりPERは「買収した会社が、完全に自分の『資産』になるまで」の年数を示しているのです。
これで、さっき書いた「PER…資産に該当」の意味が、うっすら見えてきたでしょう。まだ完全には見えていません。完全に見るために、もう一度「投資家のあなた」に戻ります。
アップルを丸ごと転売し、利益を上げる
さて、アップルを買ったあなたは、何をしたいのか。実は「経営」をしたいのではありません。「転売して儲けたい」のです。
(株って要するに、こういうことです。「会社の一部」を買って、「転売」する作業です)
で、あなたは考えます。「アップルを丸ごと転売すると、いくら儲かるだろう」と。
転売の計算式
転売の計算式は、小学生でも知っています。
『売り値-仕入れ値=利益』
ですね。で、「仕入れ値」が邪魔です。仕入れ値がゼロだったら、『売り値=そのまま利益』になるわけです。
(たとえば、アップルをゴミ箱で拾ったら、これが成立します)
ということで、「仕入れ値」を消したい。では、仕入れ値がない状態とは何か。それがさっき書いた「時価総額を、完全に回収した状態」です。
時価総額を回収したあなたは、こう言って喜びます。↓
- 買収する時の費用(時価総額)を、もう完全に払った!
- 住宅ローンを完済したのと、同じ状態だ!
- ここから先は、アップルの売り値が、全部利益になるぞ!
もちろん、別に得したわけではありません。「回収する費用」は、「毎年アップルから上がる利益」を使って、あなたが自分で払っていたわけです。
(PERの計算式「時価総額÷毎年の利益」を、あなたがコツコツ実践してきたわけです)
で、めでたく「売り値=そのまま利益」という、わかりやすい状態ができあがった。あなたはいよいよ「アップルを丸ごと売却」します。
アップルはいくらで売れる?
この時、アップルはいくらで売れるか。これは「時価総額」ですね。時価総額は「会社の値段」だからです。
だから、あなたにとって「アップルの時価総額」は「高ければ高いほど」いいわけです。これは当然ですね。
しかし、さらに理想を言うなら?「どんな風」に高いのが、一番いいのか?。答えはこうです。
『世間の人が、アップルの価値を過大評価している状態』
つまり、『アップル株が、バブルになっている状態』です。ここでいよいよ、もう一つの指標『PBR』が登場します。
バブル度は『PBR』で判断できる
バブルとは何か。「実際の価値より、高い値段で売買されている」ことですね。株でいうなら「実際の価値より、高い株価がついている」ということです。
で、会社の「実際の価値」というのは、「資産」です。「人材」とか「開発力」ではありません。
これらも当然大事ですが、数字では表現できません。株の世界では、これらは「排除」するのです。そして、『会社の価値=資産』とします。
PBRの計算式を見ると…
ここで『PBR』の計算式を見てみます。
『PBR=株価÷資産』
少しずつ正確に書き直すと、こう変化していきます。↓
- 『PBR=株価÷資産』
- 『PBR=全部の株価÷会社の資産』
- 『PBR=時価総額÷会社の資産』
という風です。最後の『PBR=時価総額÷会社の資産』に注目してください。
「会社の資産」=「実際の価値」
さっき書いた通り、「会社の資産」=「会社の実際の価値」でしたね。(人材とかは除外、という話です)
これを使ってPBRの式を置き換えると、こうなります。↓
『PBR=時価総額÷会社の実際の価値』
これで「PBR=バブル度」というのがわかるでしょう。「実際の価値の何倍まで、時価総額が上がっているか」ということですから。
バブル度が高いほど、転売は儲かる
で、投資家のあなたに戻ります。あなたは「アップルを転売したい」んでしたね。
土地の転売と同じで、バブル度が高ければ高いほど、あなたは儲かるのです。で、「バブル度=PBR」なので、「PBRが利益に直結する」のです。
「直結する」は、数学では「=」となります。つまり、「PBR=利益」となります。ここで、『ROE』を出す2つの式を、思い出してください。
- ROE=利益÷資産
- ROE=PBR÷PER
…という2種類です。これを見比べながら、私達は「PBR=利益」なんじゃないか?―と、最初に考えたわけです。
(で、ここまではるばる、考察してきました)。
で、今その通りになったわけです。道筋をたどると、
- 株取引は、「会社の転売」である
- 転売の利益は「バブル度」で決まる
- バブル度は「PBR」でわかる
- だから「PBR=利益」である
となったわけです。これで、
ROE=利益÷資産
という式のうち『利益=PBR』は、もう証明できました。これで置き換えると、
ROE=PBR÷資産
となります。後は、『資産=PER』を証明できれば、
ROE=PBR÷PER
という式が、成り立つわけですね。ということで『資産=PER』を証明しましょう。
「資産」とは何か?
当然ですが、「資産」というのは、「持っている資産」です。英語で書くと『Having 資産』です。これでROEの式を書き直すと、こうなります。↓
ROE=利益÷『Having 資産』
つまり「資産」を「Having」して初めて、『 』の部分が埋まるわけです。では、「資産をHavingする」ことを、どうやって数値化するのか?
これがまさに『PER』なのです。PERは「その会社を買い取るなら、費用の回収に何年かかるか?」という数字です。
つまり「会社という資産」をHavingするのにかかる『労力』を、数値化しているんですね。『PER=労力』なのです。
そして、実は「労力」=「資産」でもあります。それを説明します。
「労力」=「資産」となる理由
理由は、下の流れで説明できます。
- 資産はまず『入手』しなくてはいけない
- 『入手』には労力が必要である
- 逆に言えば、その『労力』を払えば、資産を入手できる
- ということは、『労力=資産』である
つまり、
- 『資産=入手=労力』
- 『資産=労力』
…というわけです。そして、すでに『労力=PER』は証明しています。ということは、
- 『資産=労力=PER』
- 『資産=PER』
となるわけです。で、もう一度『ROEの式』に戻りましょう。
ROE=PBR÷資産
ここまで、すでに出ていましたね。これに『資産=PER』を代入します。これで、
ROE=PBR÷PER
…という式が完成するわけです。
まとめ ~ROEの「2つの式」~
ROEは、下の2つの式で出せます。
- ROE=利益÷資産
- ROE=PBR÷PER
今回は、「この2つの式は、根っこでつながっている」ということを、証明しました。「数式上、たまたま一致した」のではないのです。「数式で一致するということは、根っこも一緒である」ということを、証明したわけです。
最後に「正確な計算式・単語」を一覧にしておきます。(これらは読まなくても大丈夫です。厳密な補足のためのものです)
ROEの正確な計算式・単語
まず、ROEについて。
- ROE…自己資本利益率・株主資本利益率
- ROE=1株あたりの利益÷1株あたりの株主資本
「1株あたり~」だと長いので、こういう短い用語もあります。↓
- 1株あたりの利益…EPS
- 1株あたりの株主資本…BPS
EPS、BPSは、それぞれ下の英語の略です。
- EPS… Earnings Per Share
- BPS…Book-value Per Share
このEPS、BPSの出し方は、下の通りです。
- EPS=当期純利益÷発行済み株式数
- BPS=株主資本÷発行済み株式数
それぞれの単語の意味は、下の通りです。
- 当期純利益…1年の純利益(当期=1年度のこと)
- 株主資本…純資産・自己資本のこと
- 発行済み株式数…「株式数」と考えてOK。ただの正式名称
さらに解説すると、下の通りです。
- 純利益…本業以外の収支も含めた「全体での利益」
- 純資産・自己資本…資産の総額から、負債を引いたもの。要するに「資産」。
以上、ROEに関する、正確な単語の意味・計算式をまとめました。専門用語で書くと難しそうですが、ここまで説明した通り、経済は「生活の中で、私達が実感していること」の連続で成り立っています。そのため、本質を理解すれば、それほど難しくはありません。