株の下落時は、下のようなルールで売ると決めておきましょう。
「買った時の金額より、8%下がったら何が何でも売る」
もちろん「8%」という数字は一つの例です。
こういう「絶対売るライン」を決めておく、ということですね。
※この絶対的に売るラインを一般的に「損切ライン」といいます。
この8%という数字は、グロース投資(成長株投資)の第一人者、ウィリアム・オニールが推奨しているラインです。
(正確には「7~8%」です)
買った時の値段から「7~8%」下がったら、絶対に売る
これは、成長株投資(グロース投資)の第一人者・オニールの提唱するルール。オニールはこのラインを「個人投資家の損切りの絶対基準」としています。
この「絶対」はかなり強調されていて、
- ここまで来たら、躊躇なしに売らなければならない
- 「様子見」をしてはならない
- 「株価が回復する」希望も持ってはいけない
- 「今日の市場の引けまで待つ」必要もない
- 「7~8%下がった」とう事実だけで、即売りに値する
…と書かれています(『オニールの成長株発掘法』)。
「市場の引け」まで待つのも厳禁
4つ目の「市場の引け」というのは「その日の取引の終わり」のこと。「終わりまでまって、まだ回復しなかったら売ろう」と考える人は多いです。
しかし、オニールは「それもダメ」と言うんですね。「その日の終わりまで待たなくても、朝イチだろうと昼だろうと、7~8%下がった時点で、反射的に売らなくてはならない」ということです。
損切りルールに「例外」はない
オニールが上のような損切りルールを説くと、今も昔も必ず質問されるそうです。
- 「持ち続けた方が、回復して利益が出る企業もあるのでは?」
- 「たまたま、不祥事などで一時的に落ちた場合は?」
…という質問ですね。たとえば2つ目なら「顧客情報の流出」などで、一時的に株価が急落することがあります。
しかし、そういう場合でもオニールは「例外はない」と断言。そして、こう続けています。
- 「ほぼすべての」投資家が、損失を膨らませるという、深刻な過ちを犯す
- プロの投資家でも、それは変わらない
- 損切りをするつもりがないなら、最初から株など買うな
最後の一文はやや痛烈ですが、本当にこの通り書かれています。
オニールのように、世界のトップレベルで、尋常でないプレッシャーと戦ってきた大物からしたら、「損切りする覚悟がない投資家」というのは、許せないレベルなのでしょう。
例えていうなら、「剣の道に生きる」と決めたのに「自分が死ぬことは、多分ないだろう」と思っているような浪人ですね。
オニールが宮本武蔵だったら、こういう浪人は「何で剣客になろうとしたのか、そもそもわからない」というレベルでしょう。
マーケットで出す最初の損失が、最小の損失である
投資の格言で「マーケットで出す最初の損失が、最小の損失である」というものがあります。
これも「すばやく損切りすること」の大事さを説いたものです。
株が急落する場面でも、「いきなり買値の50%」まで落ちることはありません。50%まで落ちる時も、当然「10%」や「20%」の段階を通過しているのです。
「より大きな損失」を食い止めるために「小さな損失に、自分から体当たりしていく」ということですね。
損切りで失うお金は、自動車保険の「保険料」と同じ
損切りをすれば、確かにお金を失います。このロスが嫌で、みんな損切りを避けるわけです。
しかし、オニールはこのロスを「自動車保険の保険料」に例え、こう語っています(要約)。
- 事故に遭わなければ、支払った保険料は「ムダ」だったことになる。
- しかし、じゃあ「事故に遭えばよかった」と思う人がいるだろうか?
- 保険料は「ムダになっていい」のだ。ムダになる方がいい
- 「損切りのロス」も、まったく同じである
人間が何かをする時「ムダ」は避けられない
上に書いた通り、オニールも「損切りのロス=ムダ」とは思っているわけです。個人投資家たちば「損切りしたら、お金がムダになる」と思うのは、正しいのです。
ただ「ムダになる=悪」ではない、ということですね。損切りのムダは「必要なムダ」なのです。いいことなんですね。
投資に限らず、事業でも創作でも、人間が何かをする時「ムダ」は必ず発生するもの。
- 「最初から最後まで、何の失敗もない」
- 「しかも、多額のリターンを得られる」
なんて、子供が空想するようなストーリーが、現実にあるわけがないんですね。
オニールの損切りルールは、投資だけでなく人生全般に通じる哲学とも言えます。
(事実、彼の著書ではベーブ・ルース、ビートルズ、マイケル・ジョーダンなど、投資と関係ない人々の人生が、かなり語られています)
その他の、売り時に関する投資の基本マインド
オニール以外にも、現代の投資家の間でよく言われる「売りに関する基本マインド」を紹介しましょう。
まず「まだ持っていなかったとして、今、その株を買いたいか」というもの。
これは聞いたことがある人も多いでしょう。
投資に限らずサンクコスト(埋没コスト)を戒める言葉として、よく使われますね。
「まだ始めていなかったとして、今からその事業を始めたいか?」など。
その株を「買った理由」が、すでに消えていたら売る
もう一つよく言われるのが「その株を買った理由を思い出す」というもの。
その「理由」が、
- まだ残っている…売らない
- もう残っていない…売る
…ということですね。たとえば以前のローソンで言うなら「新浪剛史氏が会長だったから」という理由で買ったとしましょう。
で、その新浪氏がサントリーに移ってしまった。そして、ローソンの株も落ちてしまった(とします)。
この場合「当初の理由」がもうなくなったので「じゃあ、売ろう」という考えです。この考え方には「投資家としてのプライドを強くする」という効果もあります。
「7~8%で損切り」という方法と違い、自分の「見る目」が間違っている可能性もあります。しかし、それだけに間違っていた時の悔しさ、正しかった時の嬉しさが大きいわけです。
こういう「投資家としてのプライド」というのは、意外とバカにならないもの。「プライドのあるギタリスト」と「ないギタリスト」では、当然前者が名曲を量産するように、個人投資家でも「プライド」は大切なのです。
まとめ
以上「下げ相場での株取引」について、オニールを中心に、基本のルール・マインドを説明しました。ポイントをまとめると下のようになります。
- 「買値の7~8%」まで下がったら、問答無用で損切り
- 損切りのロスは「保険料」である
- まだその株を持っていなかったとして、今買いたいと思うか?
- 当初株を買った時の「理由」は、今も残っているか?
これらのポイントを意識しながら、感情に振り回されることなく、冷静に売り時を考えてください。