持ち越し投資法とは「上がった株をそこで売らず、一日~数日持ち越して、上昇した所で売る」という手法。「もう少し待った方が、上がるかも知れない」ということですね。
「何だ簡単じゃん」と思う人もいるでしょう。その通りで「原理自体」はカンタンです。ただ、
- 「明日も上がっているか」を見極めるのが難しい
- 「何日待つか」が難しい
…ということですね。以下、さらに重要なポイントが『2つ』あります。
目次
- 2.「スイングトレード」との違い
- └2-1.どんな手法の「最後」にも使える
- └2-2.どんな時に「持ち越す」のか?
- 3.持ち越し投資法の、銘柄の選び方
- └3-1.「ゴールデンクロス」した
- └3-2.「短期の平均線」(5日・25日平均線)に反発しそう
- └3-3.「上場来高値」に近づいている
- 4.「下がる」と予測した場合の売り方&選び方
- └4-1.「下がる」と予測したら「空売り」
- └4-2.「空売りのポイント」をまとめると?
- └4-3.空売りのリスク・失敗のケース
- └4-4.空売りは辞めた方がいいのか?
- └4-5.「下がる銘柄」の見つけ方
- 5.「反発銘柄」の見つけ方
- └5-1.上がる反発…ダブルボトム
- └5-2.下がる反発…ダブルトップ
- └5-3.「反発した理由」がわかっていたら強い
- 6.持ち越し投資に生きる「バフェットの名言」
- └6-1.「一定のリスクは背負え。未来はいつだって不確実だ」
- └6-2.「レバレッジを多用していたら、眠れなかったろう」
- └6-3.「何が正しいかを知るには?―内なるスコアカードに従いなさい」
- 7.まとめ&参考文献・サイト一覧
- └7-1.まとめ…「持ち越し投資法」を3行でまとめると?
- └7-2.参考文献・サイト一覧
1.「持ち越し投資法」の2つのポイント
- 1.「上がる」時だけでなく「下がる」局面でも使える
- 2.「持ち越し投資法」と「スイングトレード」は大体同じだが、違いもある
1-1.「上がる」時だけでなく「下がる」局面でも使える
- 1.「下がる」と読んだら「空売り」をする
- 2.空売りとは「○日後に、現時点の価格で売ります」という、売買の予約
- 3.「○日後は、今より値上がりしてるだろ」と思う人は、喜んで買う
- 4.しかし、値下がりした場合、その人は「以前の高値で買う」ことになるので、損をする
- 5.こちらは「その株を持っていなくても」、売買の予約日に買えばいい
- 6.で、買ってすぐに、予約通り相手に売ればいい
…という方法です。この「空売り」は、「持ち越し投資法」に限らず「この株は下がる」と思った時に使う定石なので、覚えておいてください。
1-2.「スイングトレード」と大体同じだが、違いもある
スイングトレードは、デイトレードの「日数が多い版」。
- デイトレード…「その日中」に、すべての売買を終える(つまり、毎日リセット)
- スイングトレード…「数日~1週間」程度で、売買をする(つまり、数日持ち越す)
…というものです。この「スイングトレード」の内容を見て「あれ?持ち越し投資法と同じじゃん」と思う人も多いでしょう。事実、投資家の間でも「違いはない」と分類されることもあります。
2.「スイングトレード」との違い
スイングトレードとの違いを一言でいうと、「持ち越し投資法は、すべての投資法の『最後』に使うテクニック」ということ。わかりやすく「スイングトレードを知っている人」で例え話を書きます。
- 1.A株を、数日保有した
- 2.値上がりした
- 3.よし、売ろう
…というのが基本です。「数日保有している」ので、デイトレードではなくスイングトレードですね。
で、持ち越し投資法の考え方は、「この後」で登場します。
- 1.「売ろう」と思ったけど…
- 2.もしかしたら、もっと上がるかも
- 3.よし、持ち越してみよう
…ということですね。この場合「スイングトレード+持ち越し投資法」になっています。「スイングトレードの最後=売り場面で、さらに持ち越す決断をした」ということですね。
2-1.どんな手法の「最後」にも使える
これはもちろん「スイングトレード」にくっつけなくてもいいのです。「デイトレード+持ち越し投資法」でもいいんですね。要は、
- どんなスパン・手法で投資していても、
- 「売る」時は必ず来る
- その「売り」の場面で、
- 「さらに持ち越す」決断をする
…という「考え方」なのです。「投資法」というより「考え方」なんですね。もちろん、「どんな時でも持ち越せばいい」というわけではありません。
2-2.どんな時に「持ち越す」のか?
持ち越す時は必ず、
- もっと上がる
- もっと下がる
…という確信がある時です。いつでもそのように株価が動くわけではありません。
だから、持ち越し投資法は「常に使う方法」ではないのです。たとえば空手の「上段蹴り」「後ろ蹴り」などのように「必要な場面では、使う」というだけなんですね。
実は、これはすべての投資法で言えることです。「この技だけ覚えておけば、投資は全戦全勝」なんていう手法はないのです。(あったら皆やるので、すぐにそのチャンスは消滅します。これを専門用語で「裁定取引」といいます)
ということで、持ち越し投資法は、
- 「常に維持するスタイル」ではなく、
- 「必要な時だけ」取り出して使う
ような手法だと思ってください。将棋の駒でいうなら「桂馬」くらいの重要度でしょうか。
3.持ち越し投資法の、銘柄の選び方
銘柄は要するに「しばらく上がり続けそう」なものを選べばOK。具体的な条件は、たとえば下の通りです。
- 3-1.「ゴールデンクロス」した
- 3-2.「短期の平均線」(5日・25日平均線)に反発しそう
- 3-3.「上場来高値」に近づいている
3-1.「ゴールデンクロス」した
「ゴールデンクロス」というのは、
- 「長期の流れ」よりも、
- 「ここ最近の流れ」の方が、
- 上向いている
…というチャートです。株のチャートは、
- 1.『長期』の流れを示す線
- 2.『短期』の流れを示す線
この2つが「同じグラフ」の上に書かれています。そして「長期的には落ちていたが、ここ最近で急激に上がった株」というのは、「短期の線が、長期の線を上向きに追い抜く」のです。
「追い抜く」ということは、当然「折れ線グラフがクロスする」のですが、これを「ゴールデンクロス」と呼ぶわけですね。
ちなみに「短期・長期」と書きましたが、具体的には下のような線(移動平均線)があります。
- 5日移動平均線
- 25日移動平均線
- 75日移動平均線
- 200日移動平均線
当然「日数が少ないほど、短期の傾向を表す」わけです。「週」で表現したものだと、
- 13週移動平均線
- 26週移動平均線
…も使われます。全部で「6種類」ですね。
という「短期・長期の線がゴールデンクロスした」という時が、「持ち越し投資法の売りのタイミングの一つ」です。
3-2.「短期の平均線」(5日・25日平均線)に反発しそう
この方法では「最近の傾向」だけを見ます。
- 5日移動平均線
- 25日移動平均線
…という、短期の傾向だけを見るわけですね。全体の流れはどうか知らないけど、直近で上がってるんだから、上がるだろうという考え方です。
「長期の傾向」と比較せずに、何でわかるのか?…と思うかも知れません。これは「反発」というポイントに注目するのですが、5章で詳しく書きます。↓
3-3.「上場来高値」に近づいている
「上場来高値」とは、文字通りその銘柄が上場してから今まで、一番高い株価ということです。つまり「過去最高記録」ということですね。
そこまで上がっているということは、
- 何かいい要素がある(社会条件の追い風など)
- 「上がっている」という期待で、みんな買う
…という2つの理由から「今後もしばらく上がりやすい」と考えられるわけです(これは株の基本中の基本ですが)。
「上場来高値」は、初心者でも簡単に見つけられる「上げシグナル」です。問題は「それがいつまで続くか見抜くのが難しい」ということ。
これについては「その会社・業界のビジネス」をよくわかっている必要があります。よくわかっていれば、
- この上場来高値は、妥当である
- ただのバブルである
…というのを、自信を持って見抜けるわけです。あるいは、その業界がわかっていなくても「長年の株の経験」というのも役立つでしょう。
何にせよ「上場来高値」は、持ち越し投資法の「銘柄の見つけ方」で一番簡単なもの。それだけに、回数としては少ない…と思ってください(当然ですが)。
4.「下がる」と予測した場合の売り方&選び方
序盤にも書いた通り、持ち越し投資法は「下がる」と読んだ場合でも使えます。「空売り」をすればいいのです。
「下がる」と予測したのに、何で儲かるのか?と思う人もいるでしょう。ここで再度、空売りの仕組みを説明します(知っている人でも「説明の仕方」として、参考になると思います)。
4-1.「下がる」と予測したら「空売り」
「株価が下がると予想したら、空売りする」―。これは、株の「基本中の基本」です。わかりやすく、例え話をしましょう。下のように想像してください。
- 「あなた」と「小さい子供」がいる
- 子供は「妖怪ウォッチ」にハマっている
- あなたは「妖怪ウォッチのブームは、あと1年で終わる」のを予想している
- しかし、子供はその予想ができない
…ということです。で、この状態で妖怪ウォッチのプレミアカードを、子供に「空売り」します。(以下、あなた=大人と表記)
- 大人「俺、ジバニャンのプレミアカード持ってるよ~」
- 子供「ホント?」
- 大人「これ、お店で売ってないんだよね~」
- 子供「ほしい!」
- 大人「1年後でよかったら売ってあげるよ~」
- 子供「買う!」
- 大人「OK。じゃ、1年後にいくらで売ろうか?」
- 子供「今の値段!」
- 大人「そうだね。それが一番わかりやすいし、公平だね」
- 子供「今は1枚3000円だよ」
- 大人「OK。じゃ、1年後に3000円で買ってね」
- 子供「うん!」
…で、1年後。
- 大人「へへへ。実はジバニャンのカードなんて、持ってなかったんだよね」
- 大人「もう、大分値下がりしてるだろ。お、500円じゃん。たたき売りだな」
- 大人「よし、これを買って1年前の約束の場所に行こう」
…で、約束の地・カナン(嘘)。
- 大人「ほら、持ってきたよ~」
- 子供「わーい、ありがと!」
- 大人「というわけで、約束通り3000円ね」
- 子供「うん!」
- 大人(しめしめ。これで2500円の利益だ)
…というのが「空売り」です。ここで子供は「1年間の間に、カードが値下がりしたのに気づいていない」ですが、普通の株取引だったら、当然気づきます。
ということで「空売りにやられた」人は、「くそ!1年前にあんな買い注文、入れるんじゃなかった!」と後悔するわけですね。で、空売りした方はほくそ笑むわけです。
4-2.空売りのポイントをまとめると?
再度、空売りのポイントをまとめましょう。
- 1.現時点で、その株を持っていない
- 2.しかし「この株は下がる」と確信した
- 3.だから「未来で売る」約束をする
- 4.「未来で買う」約束をしてくれる人がいれば、それで空売り成立
- 5.後は「実際に値下がりした未来」で「それを買って、売る」だけ
…ということです。この「未来の約束」を「信用取引」といいます。「持っていないけど、持っていると信用してもらって、取引をする」ということですね。
4-3.空売りのリスク・失敗のケース
大体想像がつくでしょうが、これで「値上がりしたら」悲惨です。さっきの「カードの売買」で言ったら、
- 1.1年後に「3000円で売る」と約束した
- 2.1年後には、「500円に下がっている」予想だった
- 3.しかし、逆に「6000円」に値上がりした
- 4.カードを持っていなかったので、1年後に買わないといけない
- 5.6000円で買って、3000円で売る
- 6.3000円の損失が出る
…ということです。「持っていないのに取引する」という「信用取引」は、「その狙いが外れた時、無理が出る」ということで、リスクが大きいんですね。「すでに持っている」場合、「買うための労力」という「リスク」をもう越えているわけですから、リスクは小さくなるのです。
4-4.空売りは、辞めた方がいいのか?
ズバリ、素人はあまりやらない方がいいでしょう。株取引だけでなく、普通の経営でも「素人は無借金経営」が基本です。もちろん無借金の経営や株取引というのは、
- リターンが小さくなる
- 一世一代の大勝負を逃す
というデメリットもあります。このあたりは、
- 自分が「絶対に必要」とする金額はいくらなのか
- そのために「どこまでのリスクなら」覚悟できるのか
という、個人の選択の問題になります。ハッキリ言って「人生そのもの」です。株取引でも経営でも最後は、「どこまでのリスクを取るのか」という問題になるので、
- 自分は何のために生きているのか
- 「絶対に欲しい」ものは何なのか
- 「絶対になくしてはいけない」ものは何なのか
…という「哲学」の問題になるんですね。これがあやふやなままビジネスや投資に挑んだ人は、時流に乗って成功しても、最後には身の破滅を招くことが多いのです。
- どんな人間でも、連戦連勝はあり得ない
- だから、どこかで「戦いを終わらせる」ことが必要
- しかし「人生のゴール」が決まっていないから、「終わり」を決められない
- 運悪く、どこかで負けてしまう
…ということです。かつて「日本で2番目の大富豪」だった、武富士の創業者・武井保雄氏は、人生の最後で懲役刑を受けたまま、亡くなりました。「豪は色を好む」という口癖通り、自由奔放な人生を生きた偉大な方ですが、おそらく「人生のゴール」は、まったく決まっていなかっただろうと思います。
(人生のゴールがしっかり決まっている人が、社員に軍隊のような生活を強制したり、ジャーナリストを盗聴したりはしないでしょう)
…と、少し話が哲学的になりましたが、要は「空売りというリスクを冒してまで、あなたが欲しがっているものは、絶対に必要なものか」ということですね。
「そういう話はどうでもいい」と言っていると、天才中の天才だった武井氏のような方でも、最後は失敗する…ということです。まして凡人が失敗しないわけがないでしょう。
4-5.「下がる銘柄」の見つけ方
これは先に書いた「上がる銘柄」の見つけ方の「逆」をやるだけです。
- 1.チャートが「デッドクロス」した
- 2.「短期の平均線」が「下がる方」に反発しそう
- 3.「上場来安値」に近づいている
…ということです。「デッドクロス」は「ゴールデンクロス」の逆です。どちらも、
- 「短期の流れ」が、
- 「長期の流れ」に対して、
- ゴールデンクロス…『上昇』傾向(線が上向きに交差)
- デッドクロス…『下落』傾向(線が下向きに交差)
…ということです。これが「1.デッドクロス」の説明ですね。
で、「3.上場来安値」は説明不要でしょう。「過去最低記録」ということです。
「2.短期平均線に反発」は、説明が必要なので、先ほどの「上がる場合の反発」とセットで説明します。
5.「反発銘柄」の見つけ方
「反発する銘柄」の見つけ方のキーワードは、
- 上がる方…ダブルボトム
- 下がる方…ダブルトップ
です。これは株取引だけでなく、FXなどあらゆる相場で使われます。
5-1.上がる反発…ダブルボトム
ボトムは、知っての通り「下」とか「底」という意味です。つまり「ダブルボトム=2回、底値になった」ということですね。
で、「ただ単純に2回なった」だけではありません。「2回目の下がり方が、1回目よりもマシだった」という時「ダブルボトム」が成立するんですね。
- 2回目は、1回目ほどは下がらなかった
- ということは、この株は「回復に向かっている」
…とみんな考えるわけです。たまにヘッジファンドなどが「騙し」として、わざとそうやって相場を動かすこともありますが、基本的にこれは「上げの反発」なのです。
あくまで「基本中の基本」の見方ですが、まずは最初の知識として抑えておきましょう。
5-2.下がる反発…ダブルトップ
で、逆に「反発して下がる」のが「2回、最高値になった」というものです。ダブルボトムの時と同じく「2回目の方が、値上がりしなかった」という時に、成立します。
これもやはり「もう、この株の勢いは終わった」と、みんなが判断するからですね。相場はそういう「空気」で動きますから、実際その通りになることが「比較的」多いです。
ただ、繰り返しになりますがこれも「騙し」は多いので、あくまで「最低限の知識」として、覚えておいてください。
5-3.「反発した理由」がわかっていたら強い
この時有利なのが「反発した理由」がわかっていることです。「そんなん無理」と思われるかも知れませんが、実は人間は意外と、こういう「貴重な情報」を日々の仕事の中で得ているものです。そう、「自分の業界」ですね。
自分の業界の会社がどれだけ上場しているかはわかりませんが、どんなマイナーな業界でも、一定数の上場企業はあります。あるいは「二部上場だけど、これから一部上場に出世する」という可能性もあります。
自分の業界だったら、
- どういう会社は正しく、どういう会社はダメなのか
- どの会社が、一番勢いがあるか
- 逆に「危ない噂」があるのはどこか
…という情報を、日々の仕事の中で得ているはずなのです(まじめに仕事をしていれば)。
つまり一種の「合法かつ、本質的なインサイダー投資」ですが、こういうやり方もあるんですね。つまり、
- 「持ち越し投資法」は、「売るかどうか」の決断の場面でのみ、用いる技
- その時「自分の業界」の株だったら、
- ある程度「確率が高い」判断をできる
…ということです。少なくとも「門外漢の投資家が、チャートだけを見て判断する」よりは、有利な状況にあるはずです。
もちろん「反発した理由がわかる」ケースは、自分の業界以外でもたくさんあるでしょう。要は「こういう中身のある情報」を得ている人は強い」ということです。(投資も、リスクを下げて儲けようと思ったら、楽はできないのです。しかし、その分リターンも大きいです)
6.持ち越し投資に生きる、バフェットの名言
ここまで書いた通り、持ち越し投資法は「手法」というより「考え方」の一つです。たとえば「刀での斬り合い」だったら、
- 1.相手が「斬りかかってきた」時点で、よける
- 2.相手の刀が「頭上まで来た」時点で、よける
というものです。それぞれのメリット・デメリットを書くと、
- 1.安全。ただし、相手も軌道修正の余地があるので、第二撃が来るかも知れない
- 2.危険。ただし、避けたら相手は大きく空振りするので、こちらが一気に反撃できる
…ということです。つまり定番の、
- 1.ローリスク・ローリターン
- 2.ハイリスク・ハイリターン
ということですね。「刀が頭上まで来た時点で避ける」というのは、「技」というより「度胸」の問題というのはわかるでしょう。もちろん「技」も必要ですが、できるかどうかを一番左右するのは、確実に「度胸」です。
持ち越し投資法も、本当に大きな利益を狙うのであれば、結局のところ「どこまで持ち越す、勇気があるか」というマインド面が半分を占めるんですね。(もう半分は研究です)
そのように「マインド」がかなり重要な手法なので、ここまで書いた内容を補足する、ウォーレン・バフェットの名言を幾つか紹介します。
6-1.「一定のリスクは背負え。未来はいつだって不確実だ」
持ち越しは「通常よりリスクを背負う」ということです。「普通の人なら利益確定する」という場面で「あえて持ち越す」わけですからね。
ウォーレン・バフェットは「大いなる安全域」という言葉でも有名なように、
- とにかく徹底的に企業を研究し、
- 「絶対に将来性がある」企業だけに長期投資する
- あとは放置しておく
…というスタイルです(正確にいうと「放置」というのは「売買しない」だけで、経営に参加したりしているのですが)。
このように「徹底したローリスク」を貫くバフェットでも、見出しのように「一定のリスク」は負う必要がある…と説くわけですね。「一定の」がどのくらいのレベルかは、ここまで書いた通り「その人の人生観の問題」です。
6-2.「レバレッジを多用したら、眠れなかっただろう」
レバレッジとは「信用取引」のことです。「空売り」のところで書いた「持っていないのに、持っていることにして取引する」というやり方ですね。FXをイメージする人も多いでしょう。
当然ですが、レバレッジをかければかけるほど、
- 当たった時の利益が大きくなる
- 外れた時の損失が莫大になる
ということです。FXのレバレッジで破産した人の『自撮りYou Tube動画』などは、もはやホラーです。
持ち越し投資法でも、それ以外の方法でも「空売り」をする時は自然と「信用取引」をすることになります。どれだけ資産があっても「現時点で、その株券は持っていない」わけですからね。
「外れたら、将来値上がりしたその株を、高値で買わなければいけない」というリスクはあります。「空売りは、常にリスクがあるレバレッジ」なのです。
ということで、持ち越し投資法で空売りする場合も、くれぐれも軽い気持ちではやらないようにしてください。
(ちなみに、バフェットは実はかなりのレバレッジをかけているのですが、彼は「もっとかけることもできたが、やらなかった」と言っているのです。バフェット=レバレッジしない、ということではありません)
6-3.「何が正しいかを知るには?―内なるスコアカードに従いなさい」
この記事ではたびたび、
- 何のために生きているのか
- 何のために、投資で稼ぎたいのか
という、一見投資と全然関係ない話をしてきました。しかし、バフェットのように「長く成功する人」は、こういう考え方を重視します。
バフェットは2008年頃、ジョージア工科大学の学生たちに訪問を受け、多くの質問に答えました。見出しの名言は、学生の「なにが正しいかを知るには?」という質問に答えたものです。
「内なるスコアカード」というのは、言うまでもなく「自分の価値観」のこと。2014年にブームになったアドラー心理学では「自分の課題」と「他人の課題」を区別する」と表現しています。
- 自分がどう思うか…自分の課題
- 他人がどう思うか…他人の課題
ということですね。もちろん「人に不快感を与えていい」わけではありません。しかし「人のための人生を生きる」必要もないということです。
- 人によく思われたい
- だから、お金が欲しい
- だから、投資をする
というのは別にいいのですが「それで自分を見失わないように」とバフェットは言っているわけです。
ちなみに、バフェットの学生に対する回答を、「アドラー心理学風」にしたものが、『1分間バフェット』で下のように書かれています(名言というのは、常にアレンジされるものです。これも秀逸なアレンジだと思います)。
「人がどうふるまうかを大きく左右するのは、内なるスコアカードがあるか、それとも外のスコアカードがあるかということなんだ。内なるスコアカードで納得がいけば、それがよりどころになる」
…以上、持ち越し投資法にも、株取引全般にも役立つバフェットの名言を3つ紹介しました。こうした言葉も心の片隅にとどめながら、「持ち越し投資法」という技を、選択肢の一つとして活用してください。
7.まとめ&参考文献・サイト一覧
7-1.まとめ…「持ち越し投資法」を3行でまとめると?
最後に「持ち越し投資法」のポイントを3行でまとめます。
- 売る時に「あえて翌日以降に持ち越し」、さらに大きな利益を狙う
- 下がると予測したら「空売り」で仕掛ける
- 投資の手法というより「他の手法と組み合わせる、リスクの取り方」の一つ
7-2.参考文献・サイト一覧
■ メインの文献…日本経済新聞社(2015)『日経記者に聞く 投資で勝つ100のキホン』(下の各部を参考)
- Q.31「ヘッジファンド」
- Q.40「テクニカル分析」
- Q.41「移動平均線」
- Q.42「トレンドライン」
- Q.48「信用取引」
■ その他の参考文献・サイト
- 桑原晃弥(2012)『1分間バフェット お金の本質を解き明かす88の原則(Kindle 上中下・合本版)』ソフトバンククリエイティブ.
- アリス・シュローダー、伏見威蕃・訳(2009)『スノーボール ウォーレン・バフェット伝』日経新聞出版社.
- 高島ゆう(2011)『インサイダー取引で儲ける人たち』アスペクト.
- 岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社.
- 溝口敦(2004)『武富士 サラ金の帝王』講談社.
- Wikipedia『武井保雄』