投資スタイルピラミッディング投資法とは ~初心者は売りポイントの設定でリスク回避~

ピラミッディング投資法

 ピラミッディング投資法とは?

  • 「値上がりした株を、さらに買い増す」手法
  • 買い増しと同時に、売りのポイントも上げる
  • 売りポイントを高めにすれば、リスクは小さい
  • 「眠らせる資金」が多くなる
  • そのため、資金の余裕が必要

…というのがポイントです。以下、目次です。

目次(概要)

下の『詳細目次』を眺めるだけでも、ピラミッディングが大体わかります。

詳細目次

1.ピラミッディングとは

1-1.原理…上がっている株を、買い増して行く

原理・仕組みはカンタン。「手持ちの株が値上がりしたら、さらに買い増す」だけです。

  • 売らずに、さらに買うことでチャンスを増やす
  • 売りポイントを毎回上げれば、リスクはない
  • しかし、ずっと資金を眠らせているので、財力に余裕が要る

という手法です。

1-2.メリット(1)…利益をある程度、確保できる

買い増す時に「その時の値段」を損切りのポイントにすれば、損失は出ません。「その時の値段」すら、最初に買った時に比べれば高いわけですから。

少なくとも「最初に買った分」の株は、これで利益が確保できるんですね。

  • まだ売却していないので、「確定」ではない
  • しかし「売りポイント」に来たら、自動的に売るようにしておく
  • こうすれば、事実上「もう確定」している

…というのが1つ目のメリット「利益をある程度、確保できる」です。

1-3.メリット(2)…さらに上を目指せる

これは表で比較すると、わかりやすいです。まず、

  • 値上がりしたら、すぐ売る
  • そうして利益確定してから、買い増す

という「安全な買い増し」をしたとします。(これはピラミッディングではありません)

この場合、下のようになります。

どの株? 買値 売値 利益
最初の株 100円 150円 50円
1回目の買増 150円 200円 50円
2回目の買増 200円 250円 50円

合計で、150円の利益ですね。これが「安全な買い増し」の場合。


次に「売らずにひたすら買い増す=ピラミッディング」の場合。↓

どの株? 買値 売値 利益
最初の株 100円 250円 150円
1回目の買増 150円 250円 100円
2回目の買増 200円 250円 50円

合計で、400円の利益です。

  • 安全な買い増し…150円
  • ピラミッディング…400円

となるわけですね。ピラミッディングは「最初の株・1回目の買い増し株」を持ち続けた分、利益が増えるわけです。

1-4.デメリット…資金が必要(リスクは少ない)

ただの買い増しでも、資金は必要です。しかし、ピラミッディングでは「もっと必要」。理由は2つです。

  • 資金を「眠らせる」状態が続く
  • 上がれば上がるほど、追加の買値も高くなる

ということです。たとえば先の表の、「この段階」で終わったとしましょう。↓

どの株? 買値 売値 利益
最初の株 100円 150円 50円

この場合、下のような状態になります。

  • 眠っているお金…0円
  • 利益…50円
  • 購入に使ったお金…100円

つまり、この取引は「100円あればできた」のです。

これに対して「ピラミッディング」の方は、下のようになります。

  • 眠っているお金…450円
  • 利益…400円
  • 購入に使ったお金…450円

こちらは「利益が大きい」ですが、代わりに、

  • 実行するのに「450円」必要
  • しかも、まだ眠ったまま

となっています。株だったら、これが万単位になるのも普通なので、「450万、眠らせたまま)に血赤しです。

2.やり方(流れ)

2-1.持っている株が、値上がりする

まず、持っている株が値上がりしました。普通はここで「すぐ売って、利益確定」したくなるものですが、ピラミッディングは売りません。

2-2.「まだ上がるか」を見極める

普通の投資だと、「まだ上がる」と思ったら「保持」します。しかし、ピラミッディングは「買い増す」んですね。よりアグレッシブなわけです。

2-3.「上がる」と判断したら、買い増しする

買い増しの量は、徐々に減らします。(逆に増やしていくのは、天才か、有頂天の素人です)

2-4.「買い増しした値段」に「損切りライン」を置く

これは人によって違います。「買い増した時の値段」だと、「ちょっと下がっただけですぐ売る」ことになり、大きいチャンスを逃すかも知れません。(代わりに安全ですが)

2-5.そのラインに戻ったらすぐ売り、利益確定

ラインをどこに引くにしても、「そこまで下がったら売る」ので、一定の利益は確保できます。「確保できないライン」に引いたら、確保できない場合もあります。

(その分、チャンスは膨らみますが)

2-6.さらに上がったら、同じことを繰り返す

順調に上がったら、

  1. さらに買い増し
  2. 売りポイントの再設定

と、同じことを繰り返します。(経験者でも、3回くらいで終わらせることが多いです)

3.値上がりの見極め方

ピラミッディングで「この株が上がる」と見極めるのは、非常に難しいです。
ピラミッディング(トレンドフォロー)を得意とした、伝説の投資集団「タートルズ」でも、勝率35%程度とされています。

ということで「これが絶対」という見極め方はないのですが、以下、参考となる情報を書きます。

3-1.チャートから見る

要は「上昇トレンドの株」を見つけるわけなので、その方面で語られる見方と、同じです。

  • 高値を継続して、更新している
  • 安値も継続して、上に移動している

つまり、絶対的に「右肩上がりのグラフ」ということ。次に「移動平均線」でいうと、

  • 『25日線』が上向いている
  • 株価が、『25日線・5日線』両方より上で、推移している

という条件。

  • 25日線…この25日の動き(中期)
  • 5日線…この5日の動き(短期)

ということです。

  • 25日線が上向き…中期的に安定
  • 2本の線より、今の株価が上…直近の5日や25日を上回る勢い

…という意味ですね。また、

  • 急激に上がっている…危険
  • 一定のペースで、上下しながら上がっている…安全

といえます。前者は、一度落ち始めたら投資家が一斉に売り始めますが、後者は「すぐには売らない」ですからね。

3-2.ファンダメンタル(指標)から見る

ファンダメンタルとは「会社の経営指標」のこと。チャートと合わせてこれも見れば「予想の精度」がさらに上がります。

(経験者の方には、呼吸に等しい常識ですが)

ファンダメンタルについて詳しく知りたい方は、下の記事を読んでみてください。↓

ファンダメンタル投資とは?→会社の経営指標を見て、銘柄を決める

4.買い方&開始・撤退のタイミング

4-1.買い方…徐々に買う株数を減らす

「100株・50株・25株」…というように、買い増しの度に株数を減らしていきます。「上に行くほど細くなる」=「ピラミッド」…というのが名前の由来です。

必ずしも減らすとは限りません。天才なら「逆に増やす」こともあるでしょう。ただ、ピラミッディングの生みの親、ウィリアム・ギャンはこう言っています。

「相場が有利に動くほど、さらに有利になるチャンスは減っている。追加の建玉は、減らしていくのが安全だ」

というわけで、よほどの上級者にならない限り、ピラミッディングでは「数を減らしていく」が基本です。(バブル期は、素人の投資家でもこの逆を多くやっていたようですね)

4-2.開始…「最新の高値」を超えた時点

買い増しを始めるタイミングは、人によります。ただ、一番多いのは「直近高値」を超えた時です。

「直近高値=最新の高値」ですね。「一日だけの高値」ではなく、いくつかの高値を結んだ「上値抵抗線」(レジスタンス・ライン)を使うことが多いです。

4-3.撤退…買った時の値段まで、戻った時点

撤退のタイミングも、人によります。一番ノーリスクなのは「買い増しした時の値段(の付近)まで戻ったら、損切り」です。しかし、これだと「買い増ししてすぐに、売ってしまう」ということにもなります。

「ひたすら一直線に上がる相場」はありません。相場は必ず「上下しながら」「ジグザグに」上がっていきます。

このジグザグの「ザグ=下がる方」を、どこまで許容できるかで、リスクとリターンの大きさが決まります。

  • たくさん許容する…ハイリスク・ハイリターン
  • 少ししか許容しない…ローリスク・ローリターン

ということです。投資の基本ですが、ピラミッディングでもやはり同じいです。

*「ザグ=下がる方」というのは、遊びでつけたものです(笑)。

5.「やってはいけない」こと

5-1.「売りポイント=ストップ」を置かない

「ピラミッディングは危険」と言うのは、こういうやり方をする場合です。

当然ですが、「上がり続ける株」はありません。上がれば上がるほど「次は落ちる」確率が高くなるわけです。

  • 「落ちる確率」が上がっている
  • なのに、手持ちの株はさらに増えている

ということで、「どんどん、手持ちの爆弾を増やしている」ようなものなんですね。

ピラミッディングにも必ず「終わりが来る」わけですから、ストップは、どこかに置かなければいけないのです。

(ちなみに、大投資家のウィリアム・オニールも1961年に、ストップを決めずに失敗しています

5-2.もしくはストップを、「思い切り下」に置く

これは、上と違い「一応、売りポイントを置いて」います。ただ、「そのポイントが低い」ので、

  • かなり落ちるまで「自動的に売る」ことをしない
  • 損切り時には、利益がかなり減っている

…となるわけです。「マイナス」までは行かなくても「利益ゼロ」なら、あり得ます。

5-3.ただ、損切らない方が利益が爆発する可能性もある

上のやり方は逆に言えば、

  • かなり落ちた後、急回復することもある
  • 売りポイントが高かったら、そのチャンスを逃す

ということです。(ここまでも何度か書いていますが)

「リスクとリターンが表裏一体」というのは、言うまでもなく投資の鉄則です。「売りポイントを下に置いてはいけない」というのは、あくまで初心者の場合です。

6.「初心者には危険」は間違い

6-1.「買い増しポイント」で損切れば、リスク無し

ここまで書いている通り、

  • 買い増す度に、
  • 「その付近の価格」に、
  • 「売りポイント」を設定する

というやり方なら、リスクはほぼありません。もちろん「すぐに売る」時に比べて「利益が少々小さくなる」リスクはあります。

しかし、よく言われるような「初心者は手を出すな」というほどのものではありません。

6-2.ただ、資金が必要(資金を眠らせるので)

ピラミッディングで「明らかに初心者向けでない」という部分は「資金が必要」という点。ここまで書いた通り、

  • 資金を眠らせる
  • 値上がりした株を、さらに買う

わけですから、どうしても一定の資金が必要なのです。

初心者でも、すでに貯金・資産がたくさんある人はいいでしょう。しかし、大抵は元手がないはずです。

そういう意味では、「ピラミッディングは初心者には難しい」とも言えます。

また「ベテランでも勝率3割~4割」なので、「この失敗の多さに、耐え切れない」初心者の方も多いでしょう。

6-3.「積極的ピラミッディング」は、確かに危険

ピラミッディングと一言に言っても、

  • 積極的(アクティブ)
  • 消極的(パッシブ)

の2通りがあります。このうち「アクティブ」の方は、確かに初心者では危険でしょう。「売りポイントを、思い切り下に置いておく」というやり方ですね。

しかし、ここまで書いてきた通り「売りポイントを一緒に上げていく」なら、それほどリスクはありません。リターンも小さくなりますが、まず初心者の方は、そういう安全策から「買い増しに慣れる」べきでしょう。

7.大投資家のピラミッディング

7-1.ウィリアム・ギャン(提唱者、テクニカル投資の始祖)

ウィリアム・ギャン
(画像はパブリック・ドメイン)

ウィリアム・ギャンは「テクニカル分析の始祖」と呼ばれる、投資の神様の一人。「ギャンの価値ある28のルール」という法則でも知られています。

彼はピラミッディングだけを提唱したわけではありません。彼が生み出した多くの理論や手法の一つに、ピラミッディングがあるということです。

「28のルール」では、下の2つがピラミッディングに言及しています。

 20条…ピラミッディングのタイミング

  • 買い増しのタイミングは「上値抵抗線」を上回ってから
  • 売り増しのタイミングは「下値抵抗線」を下回ってから

抵抗線は「これまでの上値・下値」を結んだラインです。それぞれを超えたら「上げ相場・下げ相場」ということですね。

現代では当たり前のことですが、初期にこれを提唱したのがギャンなのです。

 21条…ピラミッディングの銘柄選択

  • 買い増し…強い上昇トレンドの銘柄
  • 売り増し…強い下降トレンドの銘柄

買い増しも売り増しも、「強いトレンド」が確認できた時だけ、ということですね。これもやはり「普通」ですが、最初に広めたのは非常に偉大です。


「28のルール」は、投資全般の「奥義」のようなもので、ピラミッディングに関する内容は、このくらいです。しかし、「ギャン理論」全体では、もっと詳細に書かれています。

7-2.ジェシー・リバモア(20世紀を代表する相場師)

ジェシー・リバモア
画像:davinci.edu.vn

「ウォール街のグレートベア」と呼ばれ、波乱万丈の人生を送った投資家です。

  • 世界恐慌で、1億ドルの資産を築いた
  • 代わりに4度破産した(1億ドルの後で、4度目)
  • 3度離婚し、晩年はうつ病。63才でピストル自殺

1929年当時の1億ドルは、現在の「4000億円」。しかし、当時の資本主義のレベルがまだ低かったことを考えると、「さらに10倍の価値がある」と言われます(つまり、4兆円レベル)。

そんな映画のような人生を送ったリバモアですが、やはり大胆にピラミッディングをしていました。しかし、彼自身は「ピラミッディング」という分類は否定し「トレンドを見ながらの、分散投資」としていたそうです。

(確かに、順番に買っていくので、ある意味分散投資です)

ただ、次で書くオニールは「リバモアの本を読んで、私もピラミッディングを始めた」と著書で明記しています。リバモア本人が否定しても、オニールレベルの投資家から見て、「リバモアは、ピラミッディングをしていた」と思われていたのは確かです。

7-3.ウィリアム・オニール(成長株投資の大家)

ウィリアム・オニール
画像:IsraelInvestor.com

成長株投資(グロース投資)の第一人者、ウィリアム・オニール。彼の著書には、下の内容が書かれています。

  • ジェシー・リバモアの本を読み、ピラミッディングを始めた
  • 買った後、2~3%上昇する度に、買い増し
  • 順調だったが、1961年は失敗した
  • 買い増しは成功していたが、欲張りすぎて損切りが遅れた
  • 結果、膨大だったはずの利益がゼロになった

というように、オニールはピラミッディングで、一度大失敗をしているわけです。ただ、これは、

  • 「損切りラインの設定が甘かった」のが原因
  • それでも「マイナス」にはなっていない

ということで、決して「ピラミッディングが危険」とは書かれていません。オニールはこの手法を評価していて、ピラミッディングとは逆の「ナンピン」は、批判しています。

(『オニールの成長株発掘法』第11章:いつ売って利益を確定するか)

8.まとめ&補足

以上、ピラミッディング投資法についてまとめました。「売りポイントの設定」でもわかると思いますが、結局「リスクとリターンの掛け合い」という、投資の基本原理に行き着きます。

8-1.『他人の意見に従うな、自分で研究しろ』byギャン

ピラミッディング提唱者のギャンも、「28のルール」の26番で「他人の意見に従うな。自分で研究しろ」と語っています。ということで、ピラミッディングについて研究する時も、最後の結論は「自分で」出してください。

(人生全般で言えることですが)

8-2.補足『ピラミッディング』の別名・一覧

ピラミッディング投資法には、下のような別名もあります。

  • 乗せ商い
  • 利乗せ
  • 建玉(たてぎょく。たてだま→×)
  • 増し玉
  • トレンドフォロー(同じではないが、似ている)
  • ピラミッティング(『ディ』でなく『ティ』を使う人も多い)

それぞれの名前によって、内容が少し変わる場合もあります。しかし、そもそも「ピラミッディング」自体、人によってやり方が違うものです。

(売りポイントの設定を、どの辺にするかなど)

という点で、これらも微妙な違いはあっても「ピラミッディングと同じ」と言えます。

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